「パンチャシラはビンネカを束ねる紐」(2019年06月27日)

かつて初代大統領スカルノはこう語った。多文化多種族であるわれわれは、パンチャシラ
がないとバラバラになってしまう。インドネシア共和国の国是パンチャシラは、多様性を
ひとつにまとめる紐あるいは接着剤の役割を果たしているということだ。

ところがオルバレジームでその接着剤は強権国家統治の仮面に利用されたために、レジー
ム崩壊後のレフォルマシ時代にパンチャシラアレルギー現象が起こったことは定説になっ
ている。

しかしイスラムラディカリズムの浸透が激化するにつれて、建国時の基礎コンセプトを維
持するためにはパンチャシラを盛り立てるのが最善の道であるという結論に達した歴代政
権は徐々に国民に対するアレルギー除去とパンチャシラ理解の振興を進めて来た。

パンチャシラはスカルノが独立準備調査会に自分で用意した案を提示し、調査会の中でも
まれた果てに到達したものだ。そのあたりの経緯は下の記事がご参照いただけます。
http://indojoho.ciao.jp/koreg/tpansila.html


スカルノが独立準備調査会に提示した日が1945年6月1日だったことから、1964
年になってはじめて6月1日にパンチャシラ記念日が祝われた。ところが政権交代によっ
てスハルトレジームは、共産党系クーデターを挫折させた1965年10月1日をパンチ
ャシラ霊力の日と定めて祝祭を行った。

オルバレジーム下にパンチャシラは毎年10月1日に祝われて、国家への謀反を鎮めた大
立役者にされたのである。1978年5月に知識階層国民がその日付とパンチャシラ創設
とは歴史的関係がないことを政府に尋ねたとき、情報大臣は国家の公式祝典は10月1日
であり、6月1日に国民が私的に祝うことは差し支えないという判断を表明している。

オルバレジーム崩壊後の国民感情がパンチャシラを横目で見る姿勢になっていたためにか
なりの期間、パンチャシラは等閑に伏されていた。6月1日をパンチャシラの日として復
活させたのは2016年のジョコウィ政権だ。


19年5月22〜23日にコンパス紙R&Dが行った調査は全国17大都市の17歳超住
民649人を対象にした。その大多数がパンチャシラを民族統一のための唯一最適なイデ
オロギーであると表明している。
賛成95.8%、反対2.7%

パンチャシラの諸項目は国民の日常生活において実践されているか?
実践されている58.2%、忘れ去られている38.7%

寛容性(他者の受容と強調)は強まっているか、弱まっているか? 
弱まっている51.1%、強まっている24.0%、変化ない18.4%

パンチャシラをやめて別の国家イデオロギーに変更しようとする勢力に不安を感じるか?
感じる54.4%、たいへん不安23.9%、不安はない19.4%

国民に対するパンチャシライデオロギー振興を担う国家機関の存在は重要と思うか?
思う84.3%、思わない9.2%