「月給1千万ルピアのテロリスト(前)」(2019年07月15日) ネオジュマアイスラミヤのベールが?がれた。国家警察デンスス88は19年6月29日 にブカシのホテルでインドネシアジュマアイスラミヤ幹部のひとりパラウィジャヤントの 一味を逮捕し、長期に渡ってインドネシア国内でのテロ活動にその姿を現さなかったJI が依然として健在であることを世間に知ろ示した。 かれらのテロ活動はもう十年以上にわたってインドネシア国内で鳴りを潜めているものの、 その間かれらは人材リクルートと養成に主眼を置いて組織固めを行い、その一環として国 外にメンバーを送り出して実戦体験を積ませる形を人材養成の一部にしてきた。 2013〜18年にメンバーを6波にわたってシリアに送り込み、ダエシュ/ISISの 戦闘部隊に参加させることをパラウィジャヤントは行って来た。かつてのJIはアルカイ ダに服従を誓い、アルカイダ方式の組織作りや戦術展開を東南アジアバージョンとして行 うオリエンテーションでテロ活動を行っていたが、パラウィジャヤントのネオJIはダエ シュに乗り換えたのだろうか。言うまでもなく、アルカイダの追従者になればアルカイダ からの資金が期待できるのは当たり前の話だ。 このネオJIに関して警察が特に関心を抱いたのは、テロ組織の資金源としてのビジネス 活動だった。パラウィジャヤントはスマトラとカリマンタンにパームヤシ農園を持ち、そ こから上がる利益でテロ組織メンバーに月給1〜1.5千万ルピアを与えていたと言うの である。 従来のテロ組織はまっとうなビジネス分野に腰を据えることをせず、資金獲得は強盗やナ ルコバ販売などの犯罪行為および寄付金に頼っていた。ところが2016年にリオ・プリ アッナ・ウィバワの率いる西ジャワ州マジャレンカのジャマアアンサルッダウラ組織を摘 発した際、一味がナルコバ製造のためのラボを作りかけていたことが判明した。しかもそ の一味は爆弾を製造して販売する構想をも立てていたのである。 合法非合法はさておき、事業を行って安定的に着実に資金を得ることは、テロ活動の実践 のためばかりでなく、組織全体がひとつの目的のために維持され続けることを下支えする。 組織がメンバーに十分な生活費を毎月与えるなら、メンバーは心置きなく組織の目標に向 かって邁進するだろう。世界中の企業が同じことをしているのである。 テロリストたちがファ'イfa'iと呼ぶ強盗犯罪は、昔から一般的に行われてきたものだ。街 中の貴金属商や銀行、あるいは現金輸送車を襲撃して金を奪う行為は、テロ行動計画が組 まれるとき、その準備段階として計画され行われてきた。だがもちろん、そのリスクは大 きい。 力づく方式が緻密な知能を必要とされる事業方式へと移行しつつあるように見えるこの現 象は、インドネシアのテロリスト界の体質変化を示すものなのだろうか?[ 続く ]