「ハラルマーケットをつかめ!(後)」(2019年07月31日)

イスラム教義に忠実であろうとするムスリマは、現在ありふれた男女混合の社会空間では
現在のようなあの姿を執らざるをえないが、男性オフリミットで女性専用のビーチができ
れば、ムスリマたちのビキニ姿が並ぶのはまちがいあるまい。

そこに着目した観光産業が既にそのような男女を分け隔てする公共施設を作り始めていて、
ムスリム行楽客の来訪を活発化させている現象が進行中のようだ。


巨大な国際ハラルマーケットへの製品供給者のトップ10が、従来からの仲間と思われて
いるインドネシアとトルコの二カ国しかなく、他のハラル製品輸出国はみんな、イスラム
教徒が国民のマジョリティを占めていない国ばかりであることを知ってイスラム協力機構
OICは愕然としたと言う。

ブラジル、インド、アルゼンチン、ロシア、中国、フランスなどがハラル製品の輸出に熱
心で、中でもトップのブラジルは輸出額が159億米ドルあり、インドネシアの76億の
二倍にのぼっている。そして同じアセアン加盟国であるタイが60億でインドネシアの後
を追っている。

ちなみに2015年のハラル食品輸出国トップ5は次の通り。トルコもインドネシアも顔
負けだ。数字は輸出売上高で、単位は億米ドル。
ブラジル 159
インド 129.6
アルゼンチン 89
ロシア 88
フランス 77


タイはそればかりか、ハラル観光にも熱を入れており、ハラルレストランやモスク・礼拝
所の細かいデータなどが常に用意されている。非ムスリムが愉しむタイ観光と同じクオリ
ティをムスリムも愉しみ、更にムスリムにとって不可欠な諸要素までたいした苦労なしに
確保できるなら、仏教国と言われているタイの観光に二の足を踏むムスリムは減るにちが
いあるまい。

中国はハラル製品開発に328億米ドルを投資した。2020年のオリンピックにムスリ
ム誘致をはかろうと、日本もハラル観光に力を入れ始めている。年間百万人のムスリム観
光客誘致の看板を掲げてハラル観光の整備に努めており、製造品のハラル認証はマレーシ
アと協力体制を築いている。

ハラルマーケットへの進出はイスラムという宗教と、そしてアラブという風土が育んだ伝
統文化への正しい理解が不可欠になる。そのハードルを乗り越えるのに決して困難はない
のだが、アレルギー心理が得てして邪魔をする可能性はあるだろう。イスラムに関するホ
ウクスで目をくらまされている国にとって、ハラルマーケットは蜃気楼のようなものであ
り続けるのかもしれない。[ 完 ]