「注文花嫁(4)」(2019年08月01日) 結婚相手紹介所に登録されている女性はたいてい、カリマンタンの内陸部で農業を営んで いる家庭の娘で20代。登録時には、間違いなく処女であることを含めて健康であること をチェックされ、また親族的背景も調査される。 顧客は大金を紹介所に払い込むと、カリマンタンに出かけて20人の花嫁候補者とお見合 いし、結婚すると決めた相手の親に結納金を渡し、結婚式を挙げ、結婚披露パーティを行 い、必要な法的処置を完了させて、花嫁をシンガポールに連れ帰る。カリマンタンで行わ れるすべての行事は紹介所がセットし、経費は紹介所が負担する。それを見る限り、その プロセスの概略は結婚手口の人身売買シンジケートと大差ない。さすがにシンジケートは 費用を切り詰めているから、そのうちにカモが引っ掛からなくなれば、結婚式や披露宴ま で行うようになるかもしれない。 台湾もシンガポールと似たような状況が背景にあるものの、台湾は国民の男女比がアンバ ランスであったことが、1980年代後半以降、外国人花嫁の需要を高める現象を招き寄 せた。 そして祖先を同じくするとかれらが考えている東南アジアの中華系女性、中でも西カリマ ンタンの女性に焦点が当たったのは、シンガポールの事情と似たようなものだった。 台湾人は西カリマンタンの中華系女性を、夫によく仕え、勤勉で、粘り強いと見ている。 おまけに、西カリマンタンの女性と結婚する費用はともかく廉い。台湾女性を妻にしよう とするなら、家はどうだ、車はどうだ、家電品はどうだ、とさまざまな出費に追い回され る。それだけの金があるなら、シンカワンから妻を5〜6人迎えることができるという話 が語られていたようだ。 台湾政府内務省データによれば、1987〜2003年に台湾に入国した外国人伴侶は2 4万人で、93%が女性で占められていた。中国大陸からが57.8%、東南アジアから が42.2%、そして東南アジアからの注文花嫁の58%がベトナム、23%がインドネ シア、タイとフィリピンがそれぞれ5%で、残りは韓国などとなっている。 シンカワンの農家の娘F(今31歳)は2005年にチョンブランの仲介で台湾人男性と 結婚した。両親は借地で野菜や果実を栽培している小作農であり、収入はわずかなものだ。 台湾人男性の伴侶になれば親に経済援助を与えることができると言うチョンブランの口車 に、若かったFは楽々と乗せられてしまった。 相手の台湾人男性がシンカワンまでやってきてFに会い、結婚を約束して妻が将来実家に 仕送りしたり里帰りすることは何の問題もないと保証した。チョンブランはFに結納金3 百万ルピアを渡して婚約の証書にサインさせた。三カ月後、Fは台北を目指す機上の人と なった。[ 続く ]