「新しい男性は女性をいたわる」(2019年11月14日)

東ヌサトゥンガラ州クパン市に住むアルフィアヌスさんの初めての子供ラファちゃんは生
まれてからもう二年半の間、ほとんど毎月、乳幼児健診のためにポシャンドゥPosyandu
(地域保健サービス施設)に連れて行ってもらっている。もちろん連れて行くのは親であ
り、パパかママが連れて行くのだが、公務員のママは時間の融通がまったくきかないため
に、比較的時間の自由なパパが連れて行くことが圧倒的に多い。

「わたしが赤ん坊を連れて行くとね、だれもが不思議そうな目で見るんですよ。そしてよ
く尋ねられます。『どうしてお父さんが連れて来るの?母親はどこにいるんですか?』っ
てね。」アルフィアヌスさんはそう物語る。

男性が上位に置かれて女性が劣位にある文化では、アルフィアヌスさんの行為は異常なも
のと見なされる。かれが育った文化では、食事でさえ男が先に食べる。男が食べ終わらな
ければ、女は食べることが許されない。そんな男優女劣文化の中にジェンダー対等と女性
への暴力廃絶をもたらすことを目的にした「新しい男性」運動を推進する青年のひとりが
かれだ。その運動はオックスファムとティモールイマジンソサエティサークルが共同で東
ヌサトゥンガラ州に導入したものだ。


社会にある男性観女性観をもっとモダンなものに変化させなければならない。新しい男性
運動に賛同した青年は結婚式の際に、祝福のために集まった人々の前で公約を行う。「夫
であるわたしは家族への責任を全うします。家族を愛し、保護し、家族に尽くします。家
庭内暴力も性暴力も家庭から追放します。貞節を守り、家庭内の用事を行い、子供の世話
をし、妻の性的ならびに妊娠・出産の権利を尊重します。この誓いを忘れないよう、今の
言葉を額に入れて壁に掲示します。」

新しい男性運動はクパン市とクパン県の10カ所の町と村で2014年にスタートした。
2017年には15のコミュニティに広がり、参加者は150人になっている。この運動
は西ヌサトゥンガラ州東ロンボッ県でも開始された。東西ヌサトゥンガラ州というのは父
権制度がきわめて強い文化になっていて、それが女性への暴力を煽る傾向をもたらしてい
る。女性は男性に従属し、家の中の世話をするだけの存在である、という女性観が常識に
なっている。


新しい男性運動は2009年末に西ジャワ州バンドンで口火を切った。父権主義的男性観
と社会制度の中にある男女の位置付けに関するパラダイムを変革することによって女性へ
の暴力を解消させようというのがその目的だ。全国のさまざまな女権保護団体がこの運動
を支持している。ヨグヤカルタのリフカアニサ、クパンの女性の家、ジャカルタのプリ財
団、女性ジャーナル、そしてブンクルの女性クライシスセンター。

この運動は三つの基本コンセプトを持っている。ジェンダー対等とジェンダー平等へのコ
ミットメントでは、「男性と女性は同一の地位にあり、その両性の間にアンフェアなもの
が存在することを拒否し、両性間の対等性の実現と平等達成の促進をはかるすべての活動
を支持する」。

差別反対に関しては、「性別や他のことがらにもとづく、あらゆる形態の差別行為を拒否
し、キャンペーンと提唱を通して差別行為を解消させるための努力を実行する」。

そして女性への暴力反対では、「女性への暴力は基本的人権侵害であり、法律違反である。
暴力実行者は責任を問われなければならない。女性に対する潜在的暴力実行者である男性
には、反暴力型の「新しい男性」のイメージを構築してビヘイビアの変更を促し、防止措
置を取らなければならない」。

この運動によって男性側の女性観に変化が起こっている。運動に参加した男性は女性に対
する暴力が家庭内で子供たちに悪影響をもたらすことを理解するようになり、自主的に暴
力行為を抑制する方向に変化している。


政府もジェンダー対等の実現をはかって、He for She運動を立ち上げた。2016年の母
の日にバンテン州を訪れたジョコ・ウィドド大統領は、「ヒーフォーシー」運動の促進に
力を注いでいる州庁役所男性公務員にシンボルのピンを献呈している。ジェンダー対等と
女性への暴力解消はひとつの事象の裏表なのである。それは持続可能な開発目標のひとつ
に含まれているのだから。