「習慣を変えないインドネシア人(前)」(2020年01月30日) ライター: インドネシア大学心理学部教官、バグス・タッウィン ソース: 2009年6月26日付けコンパス紙 "Perilaku yang Tak Berubah" 状況がその習慣にふさわしくない時ですら、インドネシア人の多くがその習慣的振舞いを 変えようとしない姿をわれわれは目にする。まるで習慣が特別な主権を持って、新しいこ とがらや変化の衝撃に負けじと立ち向かっているかのようだ。 1977年にモフタル・ルビスが明らかにしたインドネシア人の特徴はほとんど変化して いない。(モフタル・ルビスのインドネシア人論はこちらをどうぞ。 「インドネシア人の実像」 http://indojoho.ciao.jp/koreg/kjitsuzo.html ) 規則を守らない自動車運転、並んで順番を待つのを嫌がり、不平不満を言い立てる。迷信 を信じる者がますます増えて、超能力ビジネスは大繁盛。決まりを破ってでも近道を選び、 インスタントな結果を早く得ようとする傾向もたくさん目に映る。ゴミをどこにでも捨て たり、環境を破壊する振舞いも習慣的になされている。 ネガティブな習慣を変えさせるためにさまざまな法規が作られていて、その中には違反者 への罰則が記されている。ところがその決まりは働かない。法規に違反する振舞いはたく さん見受けられ、そしてそれすらが習慣になっている。 < 習慣のパワー > 「習慣は理性より強い」というジョージ・サンタヤナの言葉が、大多数のインドネシア人 が習慣を変えない状況を説明している。習慣となった振舞いは強い力で現われて来る。思 考の中で定型化されたメカニズムによって動くのである。比較・決定・一般化などのよう な思考活動を通して新知識を生み出すための精神的機能としての理性は、習慣に対して受 け身になりがちだ。 サバイバル本能をサポートするのに習慣が効果を発揮しない状況に立ち至るまでは、理性 は習慣に従う傾向を示す。理性の活動としての思考は予測されない反応が生じたときに振 舞いへの干渉を行う。常に示している振舞いが効果を持たなくなった時、理性ははじめて 別の方法、つまりその閉塞状況を打破するための新たな行為を求めて活動を始めるのであ る。 インドネシアで起こっているさまざまな変化が、以前と変わらないもの、あるいは習慣で 片付くものと捉えられているかぎり、習慣は維持され続け、更には一層の強まりを見せる だろう。そんな状況にプラスして理性への信頼の弱さが組み合わされるなら、誰もが周辺 状況への反応を定型化された振舞いで行うことになる。周辺環境や状況の変化に対する関 心の低さが影響を受けることはない。 < 振舞いの変化 > 大勢のインドネシア人が振舞いを変化させないことに関わっている主要ファクターは、 (1)状況の非一貫性、(2)状況が責任を要求しない、(3)近道志向精神(mental shortcut)、(4)環境内で発生する種々のできごとを事なかれ主義の視点から認識し意 味付ける傾向、などである。その四要素は互いにからみ合って当事者に影響を及ぼす。 [ 続く ]