「有料招待状!?」(2020年02月25日)

ライター: ジャカルタの一出版社編集員、パムスッ・エネステ
ソース: 2004年10月2日付けコンパス紙 "Undangan (tak) berharga"

ジャカルタで発行されている保健雑誌のひとつに「妊娠期間中の安全なふたりの親密行為」
と題するセミナーの広告が載った。日付・場所・開催時間などの詳細が記載された一番下
に「undangan(招待状)はお一人様2万5千ルピア」「undanganは次の場所でお求めにな
れます」とあって住所と電話番号がいくつか記されている。

セミナーとビューティワークショップを開催する予定の書籍出版社が出している広告とよ
く似ている。セミナーの開催日時や場所が記された後、次のような文句が掲載されている。
「undangan(招待状)価格はひとり7万5千ルピア」。広告の一番下には「undanganは次
の場所でお求めになれます」とあって住所と電話番号がいくつか記されている。

この印刷メディアにおける「招待状」のニュースタイル現象に、国語専門家アントン・ム
リヨノ氏を含めて首を傾げるひとは少なくあるまい。undanganについて「言葉と節度(1
984年)」の中の「結婚通知広告と招待状」と題する氏の論説の中に、純粋な意味での
招待状が述べられている。その論説の中でかれが述べている結婚招待状は無料であり、し
かも招待されるひとに送られてくるものなのだ。

KBBI第三版(2001年)にundanganの語義は、hal (perbuatan, cara) mengundang; 
panggilan (supaya datang); orang yang diundang; surat untuk mengundang; surat 
undangan と示されている。そこにあるsurat untuk mengundangやsurat undanganの語義
に、undanganは取りにいかなければならないものとは書かれていない。ましてや、金を払
って手に入れるものとも記されていない。


二十〜三十年前にセミナーの商業化はほとんどと言うか、まったく行われていなかった。
あるセミナーに招かれるひとは普通、セミナーで取り上げられる学術や技能に従事してい
るひとびとだった。undanganも招かれるひとの住所宛に送られていた。つまりセミナーと
いうものがKBBIで定義付けられている通りのものだったのである。すなわち、perte-
muan atau persidangan untuk membahas suatu  masalah di bawah pimpinan ahli (guru 
besar, pakar, dsb)。

どうやら時代が変化してしまったようだ。今や多くの人がセミナー活動にゴールデンチャ
ンスを見出している。セミナーが商売になるのだ!それがゆえに、あらゆることがらがセ
ミナーされている。セックス・不倫・早期妊娠・高血圧・心臓病・海外留学・総選挙・経
済・等々。

その商業ベースで行われるセミナーの入場券を呼ぶ妥当な名称は何だろうか?交通機関
(飛行機・船・汽車等)、スポーツ競技(サッカー・バドミントン等)、公演(サーカス
・映画等)では普通、tiketやkarcisが使われている。しかしセミナーに関する限り、わ
れわれはtiketやkarcisという名称を使うのに気おくれがするのである。同時に、tiketや
karcisを使ってセミナー会場に入る自分の姿に違和感を覚えるひともいるにちがいあるま
い。

そのような斟酌にもとづいて、セミナー実行委員会はtiketやkarcisという言葉を使う代
わりにundanganという呼び方をしているのではあるまいか。undanganという名称が相手を
尊重している雰囲気を醸し出す可能性もある。しかし別の問題も生じる。そのセミナーに
は取り上げられる分野やテーマの専門家や従事者だけが参加するのでなく、知識や視野を
広げたい素人もやってくる。セミナー実行委員会も値段の付いた招待状がどこそこで入手
できますという手管を弄する。こうして誰でもがセミナーに参加できるのである。重要な
のは、その金額の支払い能力を持っていることだ。

しかしながら、セミナー実行委員会は国語倫理をおろそかにしているように見える。招待
状を取りに行くのは麗しい姿だろうか?招待状を金であがなうのは慎みある行為だろうか?
特定の場所に取りにいかねばならない招待状は招待状という名称にふさわしくない。tanda 
masuk seminar(セミナー入場証)と呼ばれるほうがよい。もしtanda masukがぎこちなく
感じられるなら、2004年6月末にインドネシア大学心理学部学生自治会が行ったよう
にtiket seminarと呼べばよい。

undanganというものは金額の付かない(tidak berharga)無料のもので、招待者に送られて
くるものにしておくべきだ。反対に乗り物のtiketやkarcis、あるいはセミナーのtiketや
tanda masukは金を払うべきもので、それが手に入る場所へ取りに行かなければならない
ものであることをわれわれは納得するべきだ。たとえその場所で並ばなければならなくな
ったとしても。