「続々イスラムは利子禁止!?(2)」(2020年03月03日)

本当は、ユダヤ=クリスチャン式見解が提示しているいくつかの答えがriba問題に解決を
与えているように思われる。まず第一に、現場で一般的に用いられている手法によって
interestとusuryの区別がなされていること。第二に、貯金貸付組合制度で預金金利が管
理費を賄うために制限され、最終的な事業利益が金利として組合員に還元されていること。
第三は、数百年前にイタリアのドミニコ教会がribaと貧困を併せて撲滅するために金利の
ない貸付機関を作ったこと。それが現代の社会的銀行の発端と考えられている。しかしロ
ンドンに本部を置くGAVB(Global alliance for banking on values)は市場金利シス
テムを維持し続けており、それゆえに資産は年々30%の成長率を示している。シャリア
法に従えば、そのグローバルな社会的銀行はハラムとされている。


ウラマおよびイスラム知識層コミュニティで合意されているシャリア銀行界でのパラダイ
ムは市場金利をribaであると定めている。ところがインドネシア銀行初代総裁を務めたシ
ャフルディン・プラウィラヌガラの抱いた見解は、適正な銀行金利はハラルであるという
ものだった。ribaという概念をかれは、金融面だけでなく、生産から通商に至る諸分野に
おけるあらゆる種類の搾取システムと解釈したのだ。

そのシャフルディンの見解こそが本当は、強制のない自由意思による合意に基づいて経済
資源のオーナー間で行われる、フェアな利益分配共同経済システムとしてのイスラム経済
理論の根本をなすものなのである。bungaは自由市場メカニズムが定めるものであり、利
益分配は取引を行う者の間での強制のない自由意思による双方向的もしくは構造的な合意
に基づくものであるという点において、bungaと利益分配は別のものなのだ。

利益分配システムの核心は、銀行が代表する資金所有者sahib al malと事業を行う事業者
mudharib間の協力契約であるmudharabah契約に置かれている。ところが現実にその契約は、
事業オペレーションコストがマークアップされて利益が減少する傾向を持つために資金オ
ーナーの側に不利が生じる、というモラルハザードによってフェアな実践が容易でなくな
っている。その暫定対策として行われているのはオペレーションコストを差し引く前の粗
利益を分配の基準にする方法だが、これでは利益分配と呼べず、売上分配になってしまう。
本当のところ、この方法は、消費や売買の需要を満たすための協力契約として銀行と貸付
人の間で結ばれるmurabahah契約の方により近いものだ。

シャリア銀行は市場金利でなく、貯金貸付組合で行われているような管理費用を徴収する
べきである。しかしながら、社会的銀行がオンラインリアルタイム方式を導入して財務報
告を行っていることから、損益分配としてのmudharabahが持っている問題への解決がより
透明で責任のある形で成されうるにちがいあるまい。


協力と相互支援のための機関としての銀行に関するイスラム経済理論は、ソクラテス、プ
ラトン、アリストテレスらが生きた時代のギリシャ都市国家を理想の位置に据えたドイツ
の政治哲学者ハンナ・アーレント(1906−1975)の公共空間理論で説明できる。
家庭オイコスを営む場において発生する自由競争が引き起こすサバイバル圧力から連帯原
理を基盤に据えて保護してくれる理想的文明センターが都市国家ポリスであるとされた。
[ 続く ]