「続々イスラムは利子禁止!?(終)」(2020年03月04日)

物理的構造面においてポリスは町を保護する城壁に包まれているが、モラル的には法が保
護を与えている。しかし城壁外の社会との間に行われはじめた通商や融合を伴う社会変化
が城壁を崩壊させたとき、サバイバルを目指す戦場としての開放市場に対する順応プロセ
スが起こった。ダーウィンはそれをジャングルの掟に基づいて自然による選択プロセスが
発生する競争であるという理論に組み立て、その原理を適者生存と名付けた。

であるがゆえに、資本主義社会におけるマーケットの公共空間侵略をハンナ・アーレント
は連帯関係を競争関係に変えてしまう公共空間の野蛮化と呼んだのである。アリストテレ
スが拒否した利子には、資金オーナーが貧困者を搾取するシステムが含まれていると考え
られるがゆえに、禁止されたのだ。

< 社会福祉 >
イスラム経済システムはmaninah al munawarahつまり篤信と気高い道徳に啓蒙された都市
国家モデルを理想にしている。マディナの国は城壁で守られたのでなく、シャリア、つま
り不正・詐欺・盗みなどから自己と他者を守るために法を遵守するよう人間の行いを統御
する信仰心の衣服としての法によって守られた。法もまた、安全と平穏を実現させ、また
共通の繁栄に至るよう協力の基盤を整えるために、公正なものでなくてはならない。そう
することによって、シャリア原理は道徳的世界・平和・繁栄という価値の三本柱に向かう
のである。

シャリアシステムの実践はそのようにして、アルクルアンにta'awanu alal birri wa al 
taqwaと命じられているように、善事と(法に従う)信仰心の反映する協力形態が生み出
す連帯原理を踏まえた文明センターとしての都市国家に回帰する努力となるのであり、そ
の結果として家庭オイコスの経済活動は、自由市場の野蛮性から社会を保護する家族的
ukhuwahでゴトンロヨンta'awunの連帯的価値をベースにして行われるものになる。市場と
いうものが、たとえばインフレが発生するように、安全でなく、また救いをもたらさない
潜在性を有し、繁栄に対する搾取や脅威を内包していると考えられてはいても、それが否
定されているわけでは決してない。市場の定義が、互いに損失を与え合う自由競争のアリ
ーナから、経済資源を持つオイコスの間で行われる協力活動の場に変化することで、それ
は存在し続けるのである。

シャリアシステムにおいて資金は生産ファクターとして活用されるが、利子を生む商品と
して扱われることは禁止される。資金は生活環境と社会に善の影響をもたらす活動を促進
させるものとして機能しなければならない。その善としてのファシリティによって資金は
神託の宿るものとなり、それによって社会の繁栄が実現されるべく、透明で責任のある方
法で運用されなければならないのである。[ 完 ]