「下手くそなゴミ経営の裏事情(後)」(2020年03月20日)

だからインドネシアとフィリピンの海外出稼ぎ労働者がその労働分野を目指してやってく
る。マレーシアで自国民は建築労働や農園作業を行わないのだ。ましてやごみ収集仕事な
ど論外である。それはタイ、マレーシア、ベトナムの政府が国と国民の生産性を高めてい
るからだ。

インドネシアの国はタイ、マレーシア、ベトナムよりもはるかに金持ちである。もちろん
国民人口も莫大だが、中国には及ばない。インドネシアが違っているのは、インドネシア
政府が国民の生産性を高めておらず、その結果国民が繁栄していない点にある。タイ、マ
レーシア、ベトナムは人口が少ないから世話するのが容易なのだ、という口実は中国を見
るならすぐに崩壊する。14億国民を抱える中国は、過去わずか二十年のうちに国民の生
産性を押し上げて繁栄する国家になっているではないか。

< 優良生産性 >
普通の国では、政府は国家経営者であり、その責務の一つに国民の生産性を高めて心身と
もに豊かな暮らしを可能にさせることがある。シンガポールは何も資源を持たない島国だ。

飲用水さえマレーシアから輸入しなければならない。シンガポールの長所は、通商港市と
しての位置を占めている点にあった。それがために、かれらは全エネルギーを通商サービ
スに振り向けた。通商港市の第一条件は善関係者から信頼を得ることである。シンガポー
ルは総力を挙げてその維持に努めている。

スイスも海を持たない小国で、軍隊も持っていない。かれらはチーズ・時計・ナイフ・チ
ョコレートの産業があるだけだ。チーズは別にして、ナイフの素材はスエーデンから、チ
ョコレートの素材はインドネシアから得ている。そんなスイスの繁栄は観光産業と金融サ
ービスに負っている。そのふたつの長所をスイス政府が最大限に追求した結果、国民はた
いへん高い生産性を持っている。

南米の諸国でも似たようなことが起こった。第二次大戦後かれらは破産したが、今やブラ
ジル、アルゼンチン、チリ、ペルーの繁栄はインドネシアをはるかにしのいでいる。目を
みはるような発展例は中国とベトナムだ。

インドネシアの優良産品は農業・農園産品と海産物である。ところがそれらの産業は真剣
に発展させようとされないばかりか、私腹に利用されている。マレーシアやタイで事業を
開始しようと思ったら、役所に行って簡単で廉価な登記を行うだけで済む。インドネシア
では、レフォルマシが8年経過したというのに、十数カ所の役所をめぐり、多数のデスク
を行き来して、おまけに無理難題をふっかけられる。インドネシアでコメはタイ、ベトナ
ム、インドより高額だ。それはインドネシアの農民が非生産的非効率であるためでなく、
外野ファクター、つまりやくざ者・治安要員・役人らの搾取が起こしているのである。

都庁は良いゴミ経営を行って電力エネルギー・肥料・埋め立て材料などにする方法を十分
認識している。ところがトラック一台分のゴミを固めて1立米にし、液状廃棄物は洗浄さ
れ、固形ゴミはエネルギー・肥料・埋め立てなどに回されたりしたなら、汚職の機会は減
ってしまうのだ。

一日数十億の金が回転するゴミ収集者ビジネスは消滅してしまう。ゴミ経営を上手に行え
ば、汚職の機会を減らすことになり、貧困者がゴミ収集稼ぎを行う道をも閉ざしてしまう。
貧乏人に「おまえが悪い。」などと言うどころではなくなってしまうのである。[ 完 ]