「スマトラトラ(1)」(2021年02月01日)

世界のトラは百年前に10万頭いたが、今では5〜7千頭に減少した。絶滅が懸念されて
いる動物のひとつだ。絶滅に向かっている原因のひとつは密猟つまり不法狩猟で、その目
的は皮や骨を入手することにある。皮は一枚が1.5万米ドル、アジアで伝統医薬に用い
られる骨は2.5万米ドルで売れる。

既に絶滅したトラは3亜種あって、バリ虎が1937年、カスピ虎が1970年代、ジャ
ワ虎が1980年代となっている。残っている亜種はシベリア虎・アモイ虎・インドシナ
虎・マレー虎・ベンガル虎・スマトラ虎で、次の絶滅候補がアモイ虎だそうだ。


2010年の干支はトラだった。トラは中国で百獣の王とされ、白虎は西方を守護し秋を
統御する。青龍は東を守護して春を統御する。亀は北を守護して冬を統御し、南は鳳が黄
龍と共に守護して夏を統御する。中国でトラはそれらの者たちと共に四霊のひとつに取り
上げられているのだ。インドでトラはドゥルガ女神の乗り物になっている。

2010年2月13日のコンパス紙にトラの話が出ており、トラ絶滅への元凶が列挙され
ていた。筆頭に欧米が挙げられていたのは誰の見解なのだろうか?

米国で飼われているトラの数はアジアの野生トラより多い。トラの身体の解体パーツが闇
市場で売買されているのを規制する法律が米国にはない。

ヨーロッパは化粧品・バイオ燃料・洗剤などの原料にするため、各国がこぞってパーム油
を買い漁っている。そのためにインドネシアやマレーシアでは森林が開墾されてパームヤ
シ農園にされ、トラの棲息領域が急速に減少している。

ネパールはトラの皮と骨の闇ビジネスの交差点になっていて、ルートは中国にまで伸びて
いる。

インドではトラの棲息領域が減少しているために人間とトラのコンフリクトの発生頻度が
増加している。

バングラデシュではトラのハビタットであるスンダルバンのマングローブ林が海面上昇で
縮小しているため、野生トラは数パーセントにまで減ってしまうことが懸念されている。
ロシアでは朝鮮に送るために針葉樹林が伐採されていて、アムールトラはハビタットを失
いつつある。

マレーシアとインドネシアでは森林開発がトラの生活領域を狭めている。

ベトナムでは闇売買されているトラの解体パーツの発見が増加している。大型冷凍庫の中
にトラの死骸が2頭吊り下げられているのが見つかった。

中国・カンボジャ・ラオス・ミャンマー・タイ・ベトナムが共同で行っているメコン川流
域開発プロジェクトはトラの生活領域を分断してしまうことになる。

中国では、伝統医薬の材料としてトラの解体パーツの需要は昔から相変わらずの隆盛を維
持している。

というのがトラ絶滅の背中を押している状況だそうだ。


スマトラでは1969年にスマトラトラ15頭が狩られた。価格は、まだ新しいうちは一
頭が2〜3万ルピアだった。当時の対米ドル交換レートは250ルピアだ。ブンクル州の
ルジャンルボンRejang Lebong地区がさまざまな野生動物の宝庫になっていて、トラ・象
・ヒョウ・野生の水牛・オランウタン・キジャン・カンチルなどが棲息している。イノシ
シが人間居住エリアの耕作地を荒らすためにイノシシ狩りがときどき行われるのだが、イ
ノシシ猟師たちがトラ狩りを行うこともあった。[ 続く ]