「スマトラトラ(8)」(2021年02月10日)

2008年11月27日付けコンパス紙の記事によれば、スマトラトラの個体数は野生の
ものが400〜500頭、そして動物園や飼育場に232頭いる。低地の熱帯雨林から山
岳部の高地まで、マングローブ湿地や藪などを棲息環境にし、スマトラ島だけにいて、ス
マトラにある11の国立公園中の9カ所に住んでいる。雌の生活領域は20平方キロだが
雄の生活領域は60〜100平方キロに及び、森林伐採のためにその領域が確保されない
ケースが増加している。野生トラは哺乳類を捕食し、一日に6〜7キロの肉を必要とする
が、一度に40キロを食べることができる。

スマトラトラは現存する亜種の中でもっとも小さく、体長は雄が234センチ、雌が19
8センチ、体重は雄136キロ、雌91キロ。雌は生涯で30頭出産し、一回の出産は1
〜6頭、妊娠期間は102〜110日であり、毎年出産することができる。スマトラトラ
の雄のたてがみは世界の他の亜種よりも長い。

1998年に発表されたDNA検査の結果によれば、スマトラトラは他の大陸部のトラが
持っていない遺伝子を保有しているとのことで、スマトラ島が6千〜1万2千年前に大陸
から切り離されたときに島内に閉じ込められ、大陸部のトラとは異なる独自の発展を経て
来たことをそれが証明している。

スマトラトラも不法狩猟の犠牲になって、頭数は減少する一方だ。トラの牙・爪・皮・ひ
げ・骨がスマトラ島内28都市にある326カ所の動物関連アイテムを売っている販売所
の10%で見つかったことを2006年の調査結果が物語っている。それはスマトラトラ
が23頭殺されて解体されたことを推測させ、1999〜2002年の年間推定数52頭
からは減少している。

不法狩猟の範疇に属さない人間とスマトラトラの衝突は1996〜2004年間に152
回発生し、死者25人、重傷者数十人、千頭を超える家畜が餌食になり、百頭を超えるト
ラが殺された。


ジャンビの森の中でジュルトゥンjelutungの樹脂を採取していた45歳の男性が2009
年1月24日、住んでいる小屋の近くで遺体で発見された。住民居住地区にやってきたト
ラに殺されたもので、トラの生活環境内で餌がいかに減少しているかを示すものだ、とジ
ャンビ天然資源保存館長がコメントした。

被害者はプマタンラマン村の一番外側で森林に近い土地に小屋を建てて住み、ジュルトゥ
ンの樹脂を採集するのを生計にしていた。その日の早朝まだ暗いうちに、かれは仕事をし
に森に入ろうとして家を出て森に向かい、しばらく行ったところを後ろからトラに襲われ
たものと見られ、被害者は背中から腰にかけて爪で引き裂かれた痕があり、また首の後ろ
側にトラの牙による穴があいていた。

トラがこのようなやり方で人間を襲うのはきわめて稀なことであり、まだ暗い中で動いて
いる被害者をトラが家畜と勘違いしたのではあるまいか、と保存館長は述べている。被害
者を倒した後、トラはあまり間を置かずにその場所を離れているから、それが人間だった
ことが分かってトラは急いで立ち去ったように思われるとのことだ。

被害者が向かった森はかつて森林利用コンセッションを得て生産活動を行っていた会社が
何年も前に活動をやめたままになっている場所で、そこに棲むようになったトラがプマタ
ンラマン村の家畜を餌食にするようになった。この村では2007年にも一度、トラによ
る住民の死亡事件が起こっている。天然資源保存館はそのトラを森の奥深くに追いやるた
めにカーバイド爆弾を使って嚇かす計画を立てている。[ 続く ]