「スマトラトラ(7)」(2021年02月09日)

リアウ州プカンバル市で売買されているトラの解体パーツをコンパス紙が調査し報告した。
2008年2月に行われた調査によって、プカンバル市内の貴金属店・骨とう品店・道端
物売などでトラの解体パーツが普通に売られている状況が明らかになった。トラの歯はカ
キリマで一個25万ルピア、貴金属店では100〜150万ルピアの値が付けられている。
道端で骨とう品を売っている商人は「さっき華人の若いのが買って行ったから、あと二個
しかない。貴金属店では150万だが、オレから買えば25万だ。黄金をかぶせりゃ、こ
の値段じゃむりだがな。」と記者に語った。

この商人はトラの皮の端切れも商っている。10センチ四方の眉の皮は一枚12.5万ル
ピア、身体の皮は20x50センチが20万ルピアだ。「トラの牙は身に着けていると本
人に威厳が出てきて、みんなが畏敬するようになる。眉の皮は持っていると自信がみなぎ
って来る。このトラの牙は本物だぜ。陶器製じゃないよ。」その商人は床にトラの歯を叩
きつけて証明して見せる。

かれが言うには、商品の仕入れはリアウとジャンビの州境でトラの調教師と名乗る男から
買っているそうだ。昔は商品が潤沢だったが、最近は寂れる一方だ。しかし特別に何かを
注文したいなら、その男が必ず手に入れてくれるから、オレに言えば間違いはない、とか
れは宣伝した。

WWFが行った2007年末の調査でも、プカンバル市内の貴金属店でトラの歯や爪が販
売されていた。もちろんメダン・ジャンビ・パレンバンなどスマトラの他の都市でも販売
されているが、大っぴらに行われているのはプカンバルだけで、他の都市では隠れて行わ
れている。リアウ州内でも、ドゥリ・ドゥマイ・ルガッ・トゥンビラハンなどでトラの解
体パーツが売られている。プカンバル・ドゥリ・ドゥマイで売られているものはたいてい
がスヌピス森林のトラで、ルガッ・トゥンビラハンのはブキッティガプル国立公園のトラ
だそうだ。


ランプン州西部では、南ブキッバリサン国立公園にアチェ州南部で2007年6〜11月
に捕獲された野生のトラ5頭のうちの2頭(6歳と4歳の雄トラ)が手始めとして200
8年7月22日に放たれた。これは政府森林省の肝いりで自然の保護と保存をモットーに
行われたことだが、トラを放った森林の近くには1942年以来入植したひとびとの部落
があり、地元民は地元行政を通して森林省に対し保安の確保を要請していた。

地元行政は解決案として3百戸あるその部落をもっと離れた場所に移す方針を決め、1千
2百Haの土地を等価交換することを大臣が承認するよう求めているが、大臣はまだ回答
を与えていない。

部落には住民への警告を記した表示板がいくつか建てられ、その中には「夜間外出しない
ように」「森林の奥深くに入らないように」「家畜を増やさないように」といった内容が
見られた。部落内には夜間照明が増やされている。

ところがそれから二週間ほど経った8月5日ごろ、家畜のヤギやニワトリをトラに食われ
たという苦情が住民から届いた。トラが部落にやってきていることは明らかで、このプロ
ジェクトを担当している南ブキッバリサン国立公園管理館と森林警察といくつかの民間団
体は警戒態勢を強化した。担当者はそれについて、部落にやってきたのは4歳のトラでは
ないかと推測され、6歳のトラほど環境への適応がうまく進んでいないためだろうとその
理由を述べている。

2頭のトラには所在探査のための発信装置がくくりつけられていて、6カ所で所在がモニ
ターされており、4歳のトラは7月28日に住民居住地区を訪れたことがわかっている。
一方、6歳のトラは住民居住地区から遠い方に生活領域を作っているとのことだ。
[ 続く ]