「ヌサンタラのコーヒー(49)」(2024年01月04日) バンダアチェのワルンコピはロブスタを使う店が多いようだ。もちろんアラビカを使う店 がないということではない。流行っている店はたいてい、Ulee Karengの焙煎所からコー ヒーを仕入れている。ウレーカレンに入って来るコーヒー豆はラムノのグルティ山で穫れ たコーヒーが多い。 ビルエンでは、ガヨのコーヒー生産センターであるTakengon産コーヒーが優勢なのだそう だ。タケゴンでは収穫されたコーヒー豆が天日干しされ、選別されて焙煎所に送られる。 タケゴンからはお隣の北スマトラ州メダンにもコーヒー豆が流れて行く。メダンのコーヒ ー工場に送られたガヨアラビカが粉末コーヒーに加工されるのである。 ウレーカレンの別のコーヒー豆焙煎所の記事が2016年4月のコンパス紙に掲載された。 この記事は10年くらい前からアチェで起こったコーヒーブームのおかげで大忙しの日々 を送っている焙煎所の店主の様子を物語っている。 店主のムハンマッ・ユティさん34歳は15年前にこの家業を親から継承した。コーヒー 豆を焙煎し、それを挽いて粉末にする。昔から焙煎は大型の鉄鍋や筒型容器が使われてき た。そして火力は焚き木。粉挽には木製の杵。それらはすべて人間が動かしていた。その ために生産プロセスは2〜3時間かかるのが普通だった。 モダン機器を使えばプロセスは1時間足らずで終わり、しかも人間の力はほとんど必要と されない。しかし消費者の中に、古くから行われてきたプロセスで作られた粉末コーヒー を好む者がいまだにたくさんいる。かれらはたいてい、伝統的なプロセスのほうが美味し いと言う。街中にあるクダイコピの多くが、昔ながらのプロセスで作られた粉末を買いに 来る。特に焚き木で焙煎されたものは独特のアロマを持つために、それを求めて買いに来 るひとが多い。モダン機器で作られた粉末コーヒーにはそのアロマがない。 ユティの焙煎所では代々使われてきた機材が相変わらず働いている。コーヒー豆20キロ の容量を持つ鉄製筒型容器を火にかけて、それを人力で回転させる。粉挽は木製の杵を足 踏みで動かす。 生産量のほとんどがクダイコピに販売される。15年前の一日の販売量50〜60キロが、 昨今では100キロに増加しているそうだ。かれは製品を1キロ5千ルピアで販売してい る。利益率は50%だと事もなげにかれは言う。伝統的なプロセスで生産されたものはと ても廉価なのだ。モダン機材で作られたものはキロ当たり4万ルピアもするんですよ、と あるクダイコピの店主は語った。 10年ほど続いているアチェのコーヒーブームを当て込んでコーヒー焙煎事業を始めたひ とたちもいる。ガンポンラムルンに住むイリヤス・イブラヒムさん42歳もそのひとり。 イリヤスは8年前に焙煎所を開いた。8年前に一日の販売量は平均して20〜30キロだ ったが、今では最低でも50キロ、多い時は250キロも売れるそうだ。[ 続く ]