「ラ ガリゴ(4)」(2025年06月07日) 準備を整えたサウリガディンがチナに向けて航海の帆を上げる。魔物や妖怪がたむろする 島々を通るごとに危機が訪れ、戦いを繰り広げ、随行者が減っていくオデッセイのように、 危難に満ちた7つの大海戦をサウリガディンは乗り切らねばならなかった。 ルウを出帆してから7日目に、サウリガディンの軍船隊はバニュニャッ・パグリンの率い るマンチャパイッの海軍に行く手を阻まれた。激しい攻勢にたじたじとなったサウリガデ ィンも、最後にはバニュニャッの首を落として勝利する。マンチャパイッはマジャパヒッ が想定されたようだ。 続いてサウリガディンに敵対する船隊がやってくる。ラ トゥップ ソロッ、ラ トゥップ ゲラン、ラ トゲン タナ、ラ テンリ プランなどの将軍に率いられた軍船隊がサウリガデ ィンの船隊に襲いかかって来た。力尽きたサウリガディンは念力で妹を呼び、助勢を頼む。 ウィ テンリアベンはそのとき、神々とともに天上界にいて、海上の戦闘を見下ろしてい た。かの女は雷電と稲妻に乗って天に昇っていたのだ。 チナに到着する前に出現した7番目の敵がスッティア・ボガ・ロンペン リ ジャワの率い る軍勢だった。このスッティアは3年前にウィ チダイッに結婚を申し入れて承諾を得て いる男だ。サウリガディンはこの戦いにも勝利し、スッティアと部下たちをジャワに送還 した。 チナの王宮に夜明けが訪れた。水平線から太陽が昇る。その太陽の手前にもうひとつ太陽 があり、陸地へと近づいてきた。サウリガディン軍船隊の母船、ラ ウェレンレンだ。 サウリガディンは上陸してチナの王宮に入り、ウィ チダイッを妻にした。婚姻の祝宴は 7日7晩続けられたが、夫に心を開かない妻は足先が絶対に破れないように縫われた長い ズボンを履き、神の絹織物で作った17枚重ねの衣装を着て、新婚の臥床に横たわった。 ウィ チダイッを妻に求める最強の勇者としてやってきたサウリガディンだというのに、 ウィ チダイッはそんなものに何の値打ちもないという姿勢を示している。 妻の心を開いてその身を包んでいる布をすべて取り払わなければ夫婦の交わりができない ではないか。だがそれを力づくで行っても真の夫婦にはなれない。妻の心を開かせるには どうすればよいのだろうか?サウリガディンは努力した。 そしてついにウィ チダイッの心が開かれた。それはサウリガディンの強さや勇敢さがも たらしたものでなく、自分が積み重ねた航海からかれ自身が学んだ人間とこの世界という ものを物語る言葉が、強いられたために形だけの妻になろうとしていたウィ チダイッの 心を溶かしたのである。 チナの国で王者としての暮らしがだいぶ経過してから、サウリガディンはまた航海に出る ことを決心した。妻のウィ チダイッはふたりの間にできた子供を自分がひとりで養育す ることを拒んだ。子供を連れて行ってください。サウリガディンはそれもよいだろうと考 えた。 自分はこの子を偉大な航海者に育てることにしよう。果てしない海を巡る中で、自分が行 う航海をこの子に示し教育し、海を自分の生きる場所にできる男にしよう。将来この子が 自分自身の生き様を海上に求める時、その教えと体験がきっと役に立つものになる。サウ リガディンの航海は終わりのない航海だ。 人間として生きることのすばらしさをわれわれはサウリガディンの物語の中にも見出すの である。王国の最高支配者として玉座にすわり、安穏な暮らしを日々送るよりも、世界の 海を駆け巡る冒険に満ちた暮らしのほうがはるかに面白いことを、サウリガディンのその 行動がわれわれに教えているのだ。[ 続く ]