「JKT−BDGエクスプレス(6)」(2025年09月02日) インドネシアの国有事業体が組んだコンソーシアムと、このプロジェクトを受注した中国 の企業コンソ−シアムが6対4の出資比率で設立した合弁会社であるインドネシア‐中国 高速鉄道株式会社PT Kereta Cepat Indonesia Chinaが鉄道路線の全施設を建設して運行 しているのがこの事業だ。決して中華人民共和国の国家政府にインドネシア政府がオーダ ーして、中国政府がインドネシア国内に建設したものではない。これは政府間プロジェク トでなかったのだから。 この国家プロジェクトはもちろんインドネシア政府が内容を決めたものの、プロジェクト の実行はKCICが一企業としてのイニシアティブで行った。KCICはインドネシアの国有外資 系合弁会社という位置付けになるだろう。 インドネシア政府がこのプロジェクトの遂行に絡んだのはKCICが使う事業用地を用意する プロセスだけであり、国土の一部を国有地に戻してKCICに使わせるために土地の権利変更 ・買戻し・立ち退きなどを行った。そのプロセスの実行は現地を所轄している地方自治体 が担当した。 建設工事開始の式典は2016年1月21日にジョコ・ウィドド大統領出席のもとに挙行 された。当初組まれた建設工事日程では運行開始が2019年とされていたにもかかわら ず、完成は2023年まで遅れた。工期の遅延が明白になったころのイ_アのマスメディ アは、そのメインファクターとして地方自治体の担当になっている土地収用プロセスの緩 慢さを指摘している。中央政府から土地収用を命じられた地方自治体の中にこのプロジェ クトに反対している自治体首長が複数いることがメディアの中で報じられていた。 大統領は2019年に海洋投資統括相に対し、その状況を打破してディレーを長引かせな いためにタスクフォースを編成するよう命じている。それ以来プロジェクト全体の進行の ネックになっていた問題が解決して工事の進捗が速まった。とは言っても、コロナ禍が世 界を覆ったこともあって、4年という歳月が空費されてしまったのである。 この高速鉄道をインドネシアに導入するアイデアを最初に掲げたのはスシロ・バンバン・ ユドヨノ第6代大統領だった。SBYは2011年に国家開発企画庁・運輸省・JICAにそ の構想の検討を命じ、フィーシビリティスタディが行われた結果ジャカルタ〜スラバヤ間 のセミ高速鉄道とジャカルタ〜バンドゥン間の高速鉄道というふたつの案が浮上した。前 者が100兆ルピアに対して後者は67兆ルピアという金額だったことから時の政府はジ ャカルタ〜バンドゥン高速鉄道を優先する意向に傾いたもののそれ以上の進展はなく、そ うこうしているうちに大統領選挙が行われて大統領が交代した。 その案件を引き継いだジョコ・ウィドド第7代大統領は、工費が小さくその分だけリスク も小さくなるジャカルタ〜バンドゥン高速鉄道優先方針を踏襲した。しかしこのアイデア 自体がナンセンスだとして反対する声も強かった。批判の多くは150KM程度の距離で超 高速鉄道を走らせても能力と時間短縮効果がバランスしないという意見だ。そんな効果の ために巨大な投資を行うのは合理性が欠如していると批判者は言う。 バンドゥン工大交通分野専門家は、高速鉄道プロジェクトに取り組むよりも、緊急性のは るかに高い既存の国内鉄道の活性化を政府は先に果たすべきではないか、と語っている。 ガジャマダ大学交通ロジスティクス研究センターの研究員は、ジャカルタ〜バンドゥン間 の住民の移動スピードの向上のために巨大な費用をかけるよりも、ジャワ島外の交通シス テム向上を図ることのほうがより多数の国民にとっての福祉向上につながることを考える べきだと述べている。[ 続く ]