「ヌサンタラのコーヒー(終)」(2024年03月27日)

性能力アップのためにコピプルワチェンを追求し研究しているひとたちは、それにさらに
ショウガ・白砂糖・グラメラ・クリーム・ピナン・ギンセン・ハマビシを調合して最強の
パワーを得ていると物語っている。乾燥プルワチェンそのものが催淫剤なのだから、コピ
プルワチェンでなくて直接乾燥プルワチェンにそれらを混ぜればもっと効果が高まるので
はないかという気がしないでもないのだが、どうもそれはまた別次元の話になるらしく、
あくまでもコーヒーが混じるのを好むひとたちのほうが多いような印象がある。

それもそのはずで、昔のアラブやペルシャではコーヒーを催淫剤として飲むことも行われ
ていた。コーヒー飲用が盛んになった15世紀ごろから中東世界のなまめかしい夜にカフ
ワが小道具に登場する詩や物語もたくさん語られ、A Drink of Loveとかれらが表現した
カフワには秘められた快楽への扉のイメージが付着した。

インドネシアで1970〜80年代ごろまで少女や娘がコーヒーを飲むのはふさわしくな
い行為であるとされていた陰に、ひょっとしたらこの観念が影響を及ぼしていた可能性は
ないだろうか?


コーヒーが人間の肉体に及ぼす効用について、粉末コーヒーが外傷の治療に有効であると
いう話も語られている。コーヒーの粉を怪我した部分に降りかけるのだ。その効用を誰が
いつ、どんな状況で発見したのかはまったくの闇の中なのだが、オランダ時代にコーヒー
農園で事故が起こった時、切り傷・擦り傷・火傷などの皮膚の損傷の場合、それぞれの症
状に応じた応急手当が施された上に粉末コーヒーを傷口に降りかけることがしばしば行わ
れたという話があちこちに残されている。いやそんな言い方をするよりも、粉末コーヒー
を傷口に当てるのが応急手当のひとつの手法になっていたと言う方が的確な表現になるの
かもしれない。

ある研究論文には、傷口の治療にコーヒーを使う手法はミャンマーや1900年代の極東
の国々で一般的に行われていたという記述が見られる。インドネシアでも、バンドンのパ
ジャジャラン大学医学部教授が治療薬としてのコーヒーを研究していて、モルモットの火
傷治療にコーヒーの粉末がたいへん大きい効果を示したことが報告されている。傷に膿を
もたらすバクテリアに対する強い殺菌能力をコーヒーが持っていることは、今ではもう定
説になっているそうだ。


外傷を負うと、その治療のためにたいてい軟膏状の傷薬が一般的に使用される。その治療
法は傷の乾燥を遅れさせるために、傷の治癒に時間がかかる現象を必然的に招き寄せる。
おまけに傷口に薬を固定させるために包帯が使われ、それがまた傷の乾燥を遅らせるのに
一役買い、併せて負傷者の日常生活における諸行動に不便さをもたらす。傷の乾燥に時間
がかかれば、他の感染症にかかるリスクもその間継続する。特に高血糖値患者にそのリス
クが高い。

粉末コーヒーによる外傷治療の研究の中で、世の中で一般的な治療手法をコーヒーの粉末
に替えてみたところ、旧来の治療法が持っていたデメリットがあっけなく軽減されたそう
だ。コーヒーの粉を損傷している皮膚に降りかけるだけなのである。包帯もしないほうが
よい。ただし、もしも深い切り傷で傷口が開いてしまっていたら、傷口を縫合してからコ
ーヒー粉末を振りかけるようにしなければならない。医薬品よりも圧倒的に廉価な粉末コ
ーヒーで、高額な医薬品よりも圧倒的に効率よく傷が完治したことが報告されている。

この皮膚傷害の治療薬としてのコーヒーはロブスタ種のほうがより強力なのだそうだ。ア
ラビカ種よりもカフェインとアンティオキシダントをより多く含有しているロブスタ種の
方が大きい治療効果を発揮してくれるのである。そしてロブスタ種はアラビカ種よりも値
段が廉い。[ 完 ]