「星空のインドネシア(終)」(2024年05月31日)

フローレス海に浮かぶバロバロアン島に住むブギス人の文化と民俗の研究者は、船乗りた
ちが言うbintoeng bawiは夕焼けの西空が夜に変わるころに出現する金星のことだと述べ
ている。陽光が消えたときに金星が西の空にあるのは8月から12月までの期間だ。それ
はブギス人が東から吹くモンスーンを背に受けて西に向かって船出した後の、海の上を走
っている時期に当たっている。中には、故郷に舳先を向けている船もあるだろう。

金星はヌサンタラ域内でもさまざまな名前が与えられているから、インドネシア人の金星
名称リストにbintang bahiとbintang bawiがあってもおかしくない。だがそんなことを言
い出せば、インドネシアにある715地方語が持っている金星の呼称を総ざらえしなけれ
ばならなくなるかもしれない。


実は、上のリストの中のソポサラ星が北東の指標とされていることにコンパス紙記者は不
審を抱いた。ソポサラ星は四つの星から成る星座で、歪んだ四辺形をしており、それは午
前4時ごろに北東の方角に現れると説明されている。バロバロアン島のひとびとはこの星
座をビントエンボラケッパンと呼んでいるのだが、ビントエンボラケッパンは10月から
4月にかけて、午前4時ごろ南東に姿を現わすのである。

ソポサラ星が南十字星のことであるなら、この情報は少々不可解であるとコンパス紙記者
はコメントした。その時期のその時間帯に北東の空に浮かぶ歪んだ四辺形の四つ星星座は
存在しないので、この情報は何かがおかしいように思われる、とかれは記事の中で疑問を
呈している。

ビントエンボラケッパンはいつもビントエンバルエを伴って現れる。その未亡人星は南の
指標に使われている。それはビラのひとびとも同じだ。ソポサラ星が南東の間違いである
とするなら、西洋世界で、そして今や全世界で標準になった南十字星とアルファ・ベータ
ケンタウリがヌサンタラではビントエンボラケッパンとビントエンバルエになり、サポサ
ラとバルになり、グブップンチャンとウランジャルギリムになっていたことがわかる。世
界は広いのだろうか、それとも狭いのだろうか?


バロバロアン島の位置は赤道に近く、ジャワのひとびとよりも北の夜空がよく見える。そ
のためにマンダルの未亡人星が北の指標にされた。この星座はおおぐま座のアルファ星と
ベータ星で構成されている。

プレアデス星団の七つ星はブギス人もビンタントゥジュにしてしまったようだ。やはり東
を示す東星とはわし座のアルタイルのこと。東と西の指標としてブギス人はpajjekoeとか
れらが呼ぶオリオン座の鋤を使った。オリオンのベルト3星はタンラテッルエという名で
東の指標にされ、またタッルという名で西の指標にもされた。

南の指標のランバルエはさそり座の頭の部分、バレマギウェンはさそりの尾の部分が取ら
れている。タンラバジョエは大と小のマゼラン星雲を指している。さすがに船乗りは利用
する星の数が内陸人よりも幅広いようだ。[ 完 ]