「世界を揺さぶったスパイス(28)」(2024年05月31日) だが東ジャワ州パチタン県トゥラカン郡ブグル村では、地元民のスワルソさんがクローブ の葉からクローブオイルを昔から作ってきた。これは2005年のコンパス紙記事から得 られた情報だ。 道路脇に止められたトラックの荷台はクローブの葉で満たされている。ひとりの男がその 葉を荷台から下ろし、地面に設置されている装置の炉の近くに山積みにしている。もうひ とりの男がその山から葉をごっそりとつかみ取って、燃えている炉の中にくべている。炉 の中で葉はすぐに燃え上がり、灰になる。一度燃やすとその男はしばらく間を置き、また 次の一つかみを燃やす。 葉が燃えると煙が出る。しかし炉に取り付けられた煙突から排出される煙はほとんどなく、 煙突の中ほどから枝分かれしているパイプに煙は流れていく。全長20メートル直径4セ ンチほどのパイプは煙突の周りの土に固定されている。入った煙が蒸気になって液化する のが早まるようパイプの中に煙が水を通過する仕組みが設けられ、またパイプも回転する ようになっている。パイプの先端からはポツリポツリと水滴が受け皿の中に落ちている。 クローブ葉の揮発油がそれだ。 このちょっと黒っぽいクローブオイルはまだ粗製状態であり、油と水が混合している。水 を分離して濁りを取り去り、高純度のものにしなければ市場で一般消費者に販売されてい る品質にならない。 炉に葉をくべていたスワルソはそんな粗製状態のクローブオイルを販売しているのだ。か れは自分の製品を純化して販売しようとしない。「このまま売れば標準品質商品の半額以 下だ。澄んだオイルにするためにはキロ当たり1万ルピアの追加コストがかかる。自分で そのプロセスを行なうのであれば、2千万ルピアの装置が必要になる。とてもそんなこと はできない。」スワルソはそう語る。2千万ルピアというのは自分で装置を作った場合の 話だそうだ。誰かが作ったものを買うのであれば、そんな金額で終わるはずがない。 その装置を作るのも、設計図さえあれば誰にでもできるというものではない、とスワルソ は言う。「複雑なものでは決してないが、この作業メカニズムを十分理解している者にし か良いものが作れない。自分ならそれを作ることができる。しかしそんな巨額な投資をす るのは不可能だ。」 粗製のものは1キロ27,500ルピア、透明に澄んだものはキロ6万ルピアという価格 の違いになる。かれが自分の作る粗製品を売っている相手はマラン・トゥルンガグン・ヨ グヤカルタ・プルウォクルトでその最終プロセスを自分で行っているクローブオイル生産 者たちなのだ。最終生産者は半製品を安く仕入れて付加価値を付けるほうを好む。スワル ソはたくまずして最終生産者の下請けになったようなものなのだ。 クローブの生産現場に近い位置にいるひとびとが作るクローブオイルはたいていが粗製品 だ。かれらのほとんどがスワルソと似たような境遇にいるためにそうなるのである。 トゥラカンとスディモロにはスワルソのような粗製オイル生産者が30人ほどいる。その 中で公式に事業許可を得ているのは4人だけ。その4人だけが大きい街道の脇で作業を行 える。公式許可を持たない者は農園の中のような、大きい道路から隠れた場所で作業を行 わなければならない。そうすることによって無許可事業取り締まりの目から逃れることが できる。 取り締まりの網にかかれば事業許可を取得しなければならなくなり、大きい出費が起こる。 事業許可を与えられたなら、毎年の納税を逃れることもできなくなる。小規模事業者に対 する売上規準課税はかれらの利益を奪い去ってしまうだろう。 トゥラカンもスディモロもパチタン県南部の海寄りに位置しており、乾燥していて高温だ。 その気象がクローブ葉のオイゲノール含有率を高いものにしている。粗製オイル生産者は 一回の製造プロセスでクローブ葉750キロを消費し、最大で20キロのオイルを生産す る。かれらは製品が1トンになるまで買い主への納品をしない。運送費が自己負担になっ ているためだ。 パチタン周辺にはローカルの医薬品生産者がたくさんいる。ソロにはジャムゥ生産者が集 まっている。それらの業界はクローブ葉のオイルに対する需要を持っている。しかしその 需要は濁っていない澄んだオイルに対するものなのだ。濁った粗製オイルをそれらの生産 者は使うことができない。クローブ葉のオイル生産者が作る濁った粗製オイルはそれらの 産業との間に接点を持つことが難かしい。標準品質オイル生産者に売る以外に、農民のオ イル生産は道が開かれていないのである。[ 続く ]