「世界を揺さぶったスパイス(37)」(2024年06月13日) 2022年インドネシアのシナモン総生産量は9.1万トンで世界のトップに位置付けら れている。産地別の番付は2024年3月付けの記事にこう記されている。( )内は代 表的な地方。 1 ジャンビ州 (クリンチ県) 2 中部ジャワ州 (ボヨラリ県) 3 ヨグヤカルタ 4 西スマトラ (アガム県) 5 南カリマンタン 6 北マルク州 (テルナーテ市) 7 ランプン州 (西ランプン県) しかし1994年の記事の中には、西スマトラ州タナダタル県の生産品が最高の品質と評 価されており、西スマトラ州からの輸出が世界総輸出量の85%を占めているということ が書かれている。その年の西スマトラ州総生産量は2.1万トンだった。 1996年の西スマトラ州のシナモン生産に関する記事には、1994年にバトゥサンカ ルにオープンしたシナモン競売所で西スマトラとクリンチの生産品が毎月60トン競売に かけられているという報告が述べられている。 1999年の記事では、ジャンビ州クリンチ産シナモンの生産者が販売先を切り替えた話 が語られている。それによれば、従来クリンチの生産品はほとんどがパダンの輸出業者に 販売され、パダンからはマジョリティが米国向けに船積みされていた。ところが昨今はジ ャンビ州内北部を流れるトゥンカル川河口の港町クアラトゥンカルの商人に販売する量が 増えている。クリンチから550キロ離れているクアラトゥンカルの商人はシンガポール の仲介輸出入業者と取引しており、クリンチのシナモン生産者はパダンの輸出業者より高 い買値をオファーするクアラトゥンカルに売る方を選択するようになった。 クアラトゥンカルからシナモンはバタムまで5時間の船旅をし、バタムでシンガポール行 きの船に積み替えられてから9時間かけてシンガポールに到着する。 ジャンビ州のシナモン栽培面積は5.86万ヘクタールで年産1.93万トン、そのうち のクリンチ産は4.72万ヘクタールで1.79万トンを占めている。 地元ではBatang Meranginと呼ばれているムラギン川からクリンチ県の首府スガイプヌに 達する道程のあちこちを、シナモンの木の赤い葉が覆いつくしている。スマトラ島中部地 方では川のことを、「木の幹」を意味するバタンと呼んでいるのだ。スガイプヌの町を越 えてクリンチ山麓のカユアロに近付くとシナモンの木は道路の左右を埋め、その向こうの 茶畑の緑とシナモンの葉の赤色がコバルトブルーの空を背景にして大自然の美を通行人の 眼に焼き付けてくれる。インドネシアの活火山の中で最高峰のクリンチ山は大空を支える かのようにそびえ立っている。2004年5月、コンパス紙記者はクリンチ県のシナモン 栽培の取材のためにカユアロを訪れた。 クリンチ県でシナモン木の大々的な栽培が始まったのは1980年代だった。クリンチ県 農業農園局長は、シナモン畑は県内のすべての郡にあると言う。5万Haに近い土地にシナ モンの木が生えており、クリンチ県だけで国内総生産量の85%を占めている。県内の栽 培面積の広さでは、グヌンラヤ郡が圧倒的な一位、次いでグヌンクリンチ郡、そしてカユ アロ郡という順位になっている。 ジャンビ州の西端に位置するクリンチ県では、シナモンの木がいたるところに植えられて いる。家の庭、水田の中、道路の両端、丘陵、山の麓・・・。どこに植えられていても、 シナモンの木は豊かに育っている。まるでクリンチの土が、他所の土が嫌った植物ですら すべて受け入れて育てる力を持っているように見える。[ 続く ]