「世界を揺さぶったスパイス(38)」(2024年06月14日)

シナモンの木は10年を過ぎればカシアヴェラの収穫ができる。スパイスとして使われる
シナモンは木の内皮部分であり、インドネシアではその部分をcassiaveraと呼ぶケースが
多いので、ここからはそれに従うことにする。カシアヴェラがスパイスとして売買される
シナモンのことだ。

クリンチのシナモン農民のひとりは、樹齢18〜20歳の木を収穫していると語る。幹か
ら皮をむく前に、何年にもわたって伸びた枝を切る。切られた枝からもカシアヴェラを穫
ることができる。一本の木から2クインタルの乾燥カシアヴェラが得られるのだ。10歳
の木であれば、得られる乾燥カシアヴェラは10キロに満たない。

シナモン農民たちは大収穫の時期が来るまで、適宜枝を切り落としてカシアヴェラを作り、
金銭収入を得ている。日々の暮らしに必要な収入はそうやって手に入れ、最後にその木の
幹を切り開いて大収穫にするというのがシナモン農民の生活スタイルのようだ。

皮をむかれたシナモンの木は伐り倒される。シナモンの廃木は薪や炭になる。しかし根は
残される。その根からまた新しい芽ができて、木の世代交代が起きるのである。


カシアヴェラは2日間天日乾燥させる。農民の自宅の周囲や表の道路にカシアヴェラが並
べられて日射に干される。すると仲買人がやってきてそれを買い取る。中には乾燥させた
カシアヴェラをパサルに持ち込んでパサルの商人に売るひともいる。

仲買人は普通、クリンチで買い集めたシナモンをスガイプヌのシナモン商人に売り渡す。
シナモン商人はそれを西スマトラ州のソロッ県ムアララブやプシシルスラタン県のタパン
に送り、それらの中継地点からカシアヴェラは最終的にパダンに集まって来るという長い
道のりを経る。流通経路が長くなればなるほど生産者価格が圧迫されるのは世の常だ。

ムラギン川一帯にもカシアヴェラが取引されるセンターがあり、第5ベデン村の市場に近
隣の諸村からカシアヴェラ生産者が持ち込んで来て、そこで売買が行われる。グヌンクリ
ンチ郡では第8ベデン市場、同じようにスガイプヌ市・グヌンラヤ郡・カユアロ郡にも取
引センターがある。それらの取引センターでも仲買人が買い取ったカシアヴェラがたいて
いパダンに送られている。[ 続く ]