「世界を揺さぶったスパイス(57)」(2024年07月15日)

2000年を過ぎてから森林省と業界が協力して大々的な植林農園活動を開始した。28
社が業界団体を編成し、プカンバル・クタイクルタヌガラ・北ブンクル・ランプン・ボゴ
ール・パリヤマン・パンデグラン・ロンボッなどで総面積1千2百ヘクタールに2千5百
万本が植えられた。その中で生産期に入っているものは960万本と見られている。

そのようにしてやっと移行した植樹フェーズでは、どこの土地であれ、この樹の生育に適
した自然環境があればどこにでも植えることができるわけだが、それを買ってくれる仲買
人と流通業界の伝統が皆無だった場所では、いくら植えて育ててもやはり商売にすること
が難しい。だから、自然環境だけが条件になるとも言えないのである。

そういう条件がクリアーされる地方では、結構な収入になるとあって、一般家庭でもスペ
ースさえあれば住環境の保護樹として植え、いざガハルが穫れればそれで収入を得ている
ひとがたくさんいる。

素晴らしい高品質のものならキログラム当たり1千万ルピアを超える時もある。国際市場
に出ればその3倍くらいの価格で売買されているのだ。劣った品質であってもその三分の
一から二分の一くらいになるために、生産量が大きくなればとても良い収入になること請
け合いだ。国内では主に薫香製造業界に供給されている。

たとえ低品質のものであっても、精製して揮発油にすれば売値は向上する。製法は主にボ
イリングあるいはスチーミングが使われており、1キログラムの木から2ccの油が得ら
れる。


既述したように、この樹は微生物が侵入するとスパイスとしてのガハルを作るから、傷を
付けて微生物を体内に侵入させることが故意に行われている。その手法と使われる薬液が
販売されており、多くの家庭がそれを買ってグバルガハルを作ることをトライしている。

実にさまざまなアイデアが売り出されていて、中には詐欺もどきも混じっているから、素
人のガハル作りの通の中には、あの方法はどうであるとか、この方法はどうだこうだなど
といったコメントをまき散らすひとも少なくない。

生産者がだれであれ、流通ルートの中に入ったガハルはサイズとクオリティに従って選別
され、その一部が輸出される。輸出先は中東・中国・台湾・香港・韓国・日本・インド・
米国・ヨーロッパだそうだ。最高級品質ものは中東向けに輸出されている。その下の品質
であれば中国・台湾が輸出先のメインを占める。2000年ごろはシンガポール向けが総
輸出量の7割を占めていた。中継貿易国というシンガポールの面目躍如を強く印象付ける
データだ。

中東では昔、チュンダナへの嗜好が強かったのだが、今ではチュンダナ需要の一部がガハ
ルで十分に代替され得るという理解に変わってきていて、手に入りにくくなったチュンダ
ナの代わりにガハルを求める声が強まった。中東では特に、人体を良い香りにするために
スチームバスに使われることが流行しているそうだ。

インドネシアの古い格言にSudah gaharu, cendana pula. Sudah tahu, bertanya pula.と
いうものがあって、ガハルとチュンダナは同類の格違いという理解がなされているように
思われる。もちろんチュンダナのほうが格上だろう。

中国・台湾では主に薫香の原料に使われ、タイでは揮発油を精製したあとの滓が蚊避けの
薬の素材にされている。日本では仏教寺院の必需品だそうだ。[ 続く ]