「印尼華人の実像(7)」(2024年07月25日)

父系主義のひとびとは、ある一家の父親が華人であればその子供を問答無用で華人のカテ
ゴリーに入れてしまう。だからジャワにやってきた新客華人の家の子供は当然華人の烙印
を押されることになるが、その子供が中国で育った子供と同等の中華文化の能力を持てる
はずがあるまい。言語能力にしても、精神性にしても、完全に中華色で塗られた中国生ま
れの子供よりも、混血で異文化に半分足を突っ込んでいる子供の方が劣るのは自明の理な
のである。その代わり、混血の子供は多重文化という視野の広さを与えられるわけだ。

そればかりか、世間一般がたとえ父系主義に従って混血の子供を中華系と規定しようとも、
子供たちの中に自分の主体的意志で母方の文化を自分のアイデンティティに据える者が必
ず出現する。オランダ人が東インドのプリブミに産ませた子供たちの中に、プリブミの側
に立ってインドネシア独立運動の旗をふったオランダ人混血者が何人も現れた事実を否定
することはできるまい。


クウィはインドネシアの華人社会における教育問題に関して、こう書いている。中華会館
が抱いた最大の使命は華人社会に孔子の教えを再確認させることだった。だからクオリテ
ィのより高い教育を華人社会に与えるということは第一義的なものでなかったのだ。しか
し漢字で書かれた孔子の著作を学ばせることが持つ大きな意義が方法論の中にすぐに浮か
び上がって来た。中華会館運動指導層の中に、その教育論に関連して華人社会の中での貢
献を目指す役員がいたのと同時に、それを政治的に利用してオランダ東インド政庁に華人
子弟に対する教育の道を開かせようと考える役員もいた。

政庁はプリブミへの公的教育の検討を開始しており、その成果はHollandsch-Inlandsche 
Schoolという学校制度の形で1907年に結実する。だが在留外国人はインランダーに属
していない。その教育を受ける対象に華人は含まれていないのだ。

政庁が原住民社会に対する福祉政策を行なうとき、華人やアラブ人は除外されるのが普通
だった。華人社会の中にそれを差別だと考える者がいた。華人はプリブミよりも低い地位
に置かれている。華人の地位を引き上げてプリブミと同程度の扱いをオランダ人に行って
もらうために、華人はもっとオランダ語になじむ機会を必要としている。華人界からオラ
ンダ人に向けられた政治的アピールや交渉は、オランダ語を流暢に操り、読み書きができ
てオランダ語の情報をたくさん身に着けている者が行わなければならない。そうでない人
間をオランダ人は相手にしようとしないのだから。


オランダの統治下に置かれている華人社会の地位をもっと高め、政庁の行なう国民政策の
恩恵を華人社会にも行き渡らせるように改善するために、HISのような学校制度を華人
向けに実施してもらうことが急務である。そのためにどうするか?

中華会館が華人子弟に高いレベルの教育を与えてその成果を示すことで、華人子弟に対す
る国民教育の道を政庁が開くようにオランダ人に考えさせるのだ。ヨーロッパレベルの公
教育を与えられた華人子弟がそれを十分にこなす能力を持っていることをオランダ人に確
信させれば、華人子弟への公教育が知的レベルの高い国民を増加させるという国民教育の
主旨に貢献するのはまちがいない。この企ては成功を収めて、1908年にHollandsch
-Chineesche Schoolという学校制度が東インドでスタートした。[ 続く ]