「古本の中から宝物(1)」(2024年09月24日)

ライター: ジャーナリスト、アンドレアス・マルヨト
ソース: 2008年8月19日付けコンパス紙 "Bukti Sejarah Bisa Saja Terselip di 
Buku" 

読書に疲れたら、すぐにその本を閉じたくなるだろう。しかし自分がどこまで読んだのか、
後で読書を再開するときにどのページから読み始めるのか、を示すためにしおりをそのペ
ージにはさむはずだ。昔のひとはしおりの代わりに使えるものを適当に使っていた。本に
挟み込まれたしおりの代替物が、ずっと後になって特別の意味をもたらすものになり得る
のである。

北スマトラ州メダン市の古本市場でコンパス紙が古書籍の収集を行ったとき、こんなこと
が起こった。何十年もの年齢を重ねた古書をコンパス紙が蔵書として購入したあと、それ
らの書物を調べていたときに本のページの間に挟み込まれているさまざまな紙が見つかっ
た。挟み込まれた時にはたいした値打ちのなかったありふれた紙でも、何十年も経過した
あと、それらは特別な意味を有するものになったのだ。本の持ち主でさえ、その紙をそこ
に挟んだときのことなんか忘れてしまっているだろうし、ましてや本人にとってその紙は
ゴミに近いものだったのではあるまいか。


喉の荒れや痰を切るための飲み薬の説明書が1930年代に出版された書物の中に挟まっ
ていた。薬の名前はABDIJSIROOPと書かれている。おもしろいことに、その説明書には四
種類の言葉が四種類の文字で印刷されていた。インドネシア語がアルファベットで、ジャ
ワ語がジャワ文字で、マンダリンが中国文字で、アラブ語がアラブ文字で。

そこに使われているインドネシア語の綴りは1947年より前の時代に使われていたファ
ン オパイゼン綴りになっていた。ファン オパイゼン綴りの顕著な特徴である/u/が/oe/
と綴られる決まりに従った書き方になっているため、1947年のスワンディ綴りに移行
する前に作られたものであるのは間違いない。シロップ薬が入っていたビンはオランダで
既に骨董品になっていて、骨董品競売に時おり登場する。そのデータによれば、この薬は
1925年から1950年まで販売されていたそうだ。

このアブデイシロープの商標と広告に人物の顔が使われており、それはインドネシアで初
めてのアイデアだったとされている。少なくともインドネシアの広告宣伝業界ではそうい
う歴史が語られているのだ。この製品は既にインドネシアの市場から姿を消してしまった
ようだが、オランダではAlfacoという会社がまだ製造しているそうだ。

この説明書は社会学的にたいへん興味深い分析対象になるだろう。インドネシアで国内販
売される商品の説明書に4種類の言葉が使われているケースはめったに見られるものでは
ないのだから。これが北スマトラで見つかったということは、当時の北スマトラ地方の市
場が人種と文化の雑種性を強く持っていたことを反映するものであるように思われる。

つまり文化が融合し合う前の段階にあるひとびとが混じり合って住んでいた土地では、住
民が自分たちの固有文化をその生活の中で優先させていた時期だったために、それらの個
別セクターにその薬に関する効能や使い方の正しい理解を均等に持たせようとしてそんな
形が取られた可能性が推測されるのである。ただし、その分析はまだ仮説段階であって、
もっと広範囲の細かい検討と議論を経て、はじめてひとつの説が立てられなければならな
いだろう。

説明書のインドネシア語はこんな雰囲気で書かれている。その一部を抜粋してみよう。
Kalau orang djadi toea orang loedakan lender lebih maka, dengan makan ABDIJSIROOP 
ini lender itoe dilepaskan dengan gampang dan djoega kekerasan batoek itoe 
dikoerangkan.
実にユニークではないか。[ 続く ]

(訳注:lenderは現代インドネシア語でlendirと綴られる。loedakanは現代インドネシア
語のludahにkanが添えられたものと推測され、口中に湧くことを意味しているように思わ
れる。現代インドネシア語にmeludahkanという語法はあるが、意味が異なっている。)