「鬘 付け髷 付け睫(2)」(2024年10月08日) インドネシア国内でも国際ファッションの流行に後れを取るはずがなく、ウイッグの国内 販売も増加した。おかげで原料である頭髪の買入れ価格も上昇し、インドネシア国内では キロ当たり9千ルピアの値が付いた。そのころ米1キロの価格が110ルピアだったから、 インドネシアの長髪女性たちの頭には間違いなくひと財産が載っていたと言えるだろう。 太古の時代から女性の身体はまるで黄金でできているようだったというのが人類史の一テ ーマかもしれない。 インドネシアのウイッグ生産者は原料調達エージェントから頭髪を仕入れていた。インド ネシアの産業構造の中で、農林水産物は自然界からそれを収穫する民衆がおり、収穫期に なると民衆が収穫した産品を仲買人が買い集めに回るというシステムが今でもたいていの 物品で一般的になっている。頭髪の調達にもそのシステムが使われた。 仲買人とその手先の人間が村々を回って村人の頭髪を買い集めてくるのである。仲買人は 溜まった頭髪をエージェントに売り、エージェントがウイッグ製造メーカーに原料として 納入するのだ。 カンプンの村人は水浴して洗髪するときに抜け落ちた頭髪をこまめに集め、頭髪仲買人が 回ってくるとそれを売る。仲買人が買い取る頭髪にも条件があって、直毛で滑らか、長さ は15センチ以上と決まっていた。長さ55センチの頭髪には最高の買値が付いた。白髪 や縮れ毛は廉価でしか買ってもらえなかった。 長い頭髪が高く売れるとあって、賊どもも頭髪を狙うようになった。中央ジャカルタ市北 プトジョで民家に押し入った強盗はその家の金目の品を盗んだが、盗まれた品物の中に数 キロの頭髪が入った包みが混じっていた。中部ジャワ州スコハルジョでも、民家に忍び込 んだ泥棒がぐっすり眠っていた女性の頭髪をハサミで切り取って持ち去るという事件が起 こった。その女性は翌日結婚式を挙げる予定であり、披露宴で晴れの姿を世間に示すこと になっていたそうだ。 インドネシア国内産業経済メディアが出した1996年2月のニュース記事の中に、カツ ラとつけまつげの輸出が上昇しているというものがあった。1995年1〜9月期のイン ドネシア産カツラの輸出総額は20ヵ国向け1.5千万米ドルにのぼり、1992年の年 間5ヶ国向け3百万米ドルから長足の進歩を遂げている。つけまつげも95年の3四半期 で598万米ドルに達していて、前年の年間数値628万米ドルを凌駕するのは確実と見 られている。 世界的なファッション界の流行がそこに強い影響を及ぼしているのは明らかで、この商品 の生産は相変わらず人間の手作業で行われていることから、労働力の豊富なインドネシア にとってたいへん有利なビジネスになるのは疑えない。この商品の原料である合成繊維あ るいは人間の頭髪も、大規模な繊維産業と大きい人口を持つインドネシアにとっては有利 な条件下にあると言えるだろう。 ハルモコ情報相は西ジャワ州で、イドゥルアドハの祝祭援助金を政府から得た市民はクル バンのためにヤギを買うようにし、残った金を使ってつけまつげを作るようにしなさい、 と国民に呼びかけた。世界中の化粧品業界がインドネシアを優れた生産センターと見なし ており、インドネシアで作れば作っただけ必ず輸出されるから、国民はこの機会を大いに 利用するようにしてほしい、という大臣の希望なのだ。 ある外国の業界者も、インドネシア産つけまつげを入手するために中部ジャワ州プルバリ ンガの民間資本と合弁でRoyal Kennyという外資合弁会社を興し、インドネシア産の商品 を世界市場に輸出することを進めている。[ 続く ]