「鬘 付け髷 付け睫(3)」(2024年10月09日) インドネシアで生産されているウイッグやつけまつげの9割近くが米国に輸出されている。 米国のカツラ市場はたいへんに巨大であり、合成繊維素材のカツラは女性用が1,335 万米ドル市場になっている。男性用は101万米ドルだ。 人間の頭髪を使った女性用カツラの場合は市場サイズが628万米ドルで、またつけまつ げも50万米ドルの市場規模になっているそうだ。 米国のほかにインドネシア産カツラやつけまつげを輸入している国はドイツ・フランス・ イギリスなどの西ヨーロッパ、そして東アジアの韓国・日本、サウジアラビア、ナイジェ リアなどとなっている。1996年の産業経済ニュースの記事にはそう書かれている。 インドネシアでウイッグやつけまつげの生産地の話が出ると、中部ジャワ州のプルバリン ガという地名が必ず浮上してくる。プルバリンガ県は元々貧しい県であり、住民は都市部 に出稼ぎに出るのが習慣になっていた。1960〜70年代にはジャカルタなどの都会へ 働きに出て、男も女も家庭使用人になる者が多かった。 ところが70年代ごろからその地方でウイッグやつけまつげの生産が活発化しはじめたた めに、住民の出稼ぎが減少するようになった。たとえば、プルバリンガ県ボジョンサリ郡 カランバンジャル村住民のグディヨノさんのケースはこんな話だ。 かれもジャカルタへ出て5年間働いて故郷へ戻って来た。戻って見ると、村民の多くが自 宅でウイッグやつけまつげを作って収入を得ており、都会へ出稼ぎに出る者が減少してい たから、かれも出稼ぎをやめて頭髪製品作りを始めた。そして今では百人を超える作業員 を自宅で働かせる大規模生産者のひとりになっている。かれはフェアレディと名付けた頭 髪商品製造会社の創業オーナーになったのだ。かれの隣人たちの多くも、様々な規模の同 じような生産者になっている。 カランバンジャル村の住民650戸の8割が頭髪商品の製造に携わっており、自営の生産 者になっている家と、家族の誰かが製造工場へ働きに行く家の二種類に別れていた。頭髪 商品の生産が、村民の中に都会へ出稼ぎに行く者がもうほとんどいない状況をもたらした と言われている。そのような、製造会社の下請けでなくて独立した生産者として住民が家 内工業を行い、作った製品を業界の流通会社や商店などに販売する形態はインドネシアで plasmaと呼ばれている。 プルバリンガに大規模生産者が増加してからも、その間で生産者同士が他者を倒し合う競 争はあまり顕著にならず、プラスマ生産者たちはたいていが大きい工場と協力関係を築い て工場側の生産量を増やすための役割を担う形が一般的になっている。 プルバリンガ県の2010年頭髪商品製造セクターの明細に関する情報によれば、外資系 製造工場が17社、内資系が11社、家内工業250軒で5万2千人がこのセクターに従 事しており、県内労働力総数42万人の12%に職を与えている。県内産の頭髪商品は米 国に輸出されていて、2010年は月平均の輸出売上高が280億ルピアになっていた。 プルバリンガ県下の中小零細産業構造は10万4千の事業所で構成されている。その上位 を占めているセクターは自動車用消音排気管・木竹加工・箒・加工食品などで、木竹加工 品や箒は輸出実績さえ持っている。頭髪製品を作るプラスマ生産家庭が県下の中小零細産 業を賑わせているのは言うまでもない。[ 続く ]