「鬘 付け髷 付け睫(7)」(2024年10月15日) プルバリンガでつけまつげの製造工場を経営しているインドネシア人女性社長は、201 3年末以来、生産量が激減していることを明らかにした。インドネシア製品がそれまで世 界の市場を席巻していたというのに、中国とベトナムの廉価製品が市場に出回りはじめた ことから、米国のインポーターが注文を減らしてきたのだ。 昨年末ごろまでは毎月100万セットのつけまつげがコンスタントに船積みされていたが、 5月には40万セットにまで落ち込んだという本人の打ち明け話が2014年のコンパス 紙に掲載されている。 米国とヨーロッパのインポーターはオファーの開始された廉価な中国製とベトナム製にす ぐに乗り換えたそうだ。輸出価格差はかなり開いている。インドネシア産が4千5百〜5 千5百ルピア/セットであるのに対して、中国やベトナム産はルピア換算で1千5百〜3 千5百ルピア/セットでオファーされている。インポーターからの注文数がカットされた ためにかの女の工場は人減らしを余儀なくされた。繁忙期に7百人雇用していた作業者は いま4百人になっている。 国際市場におけるその状況はプルバリンガの頭髪商品製造業界全般に影響をもたらしてい て、大規模工場に半製品を納入していたプラスマ生産者の間で事業を閉めるところが増え た。プラスマ生産者のひとりは、2014年の年初から工場が注文を止めたため、やむな く生産をストップしていると語っている。工場は大量の製品と半製品のストックを抱えて しまい、物を作るどころの話でないという状況だそうだ。 その女性社長の会社は原料の合成繊維を日本と韓国から輸入し、頭髪は国内をメインにし て残りをインド・バングラデシュ・パキスタン・ベトナム・香港から買っている。原料市 場にも影響が広がることが懸念されている。 そんな危難に襲われる前の2011年ごろには、頭髪商品製造業界の人手不足が新聞で騒 がれていた。製造工程を人間の熟練した技術に頼っているこの業界が増加する一方の注文 をこなすためには、高技能作業者の増加が不可欠だ。ところが地元の熟練作業者は既に雇 いつくされ、次世代養成は遅々としてはかどらないという、言ってみれば業界のぜいたく な悩みなのかもしれない。 上記会社の女性社長は、理想的な作業者は熟練した女性作業者なのだが、その条件に当て はまる地元の女性たちはすべて業界のどこかで働いているために、仕方なく理想条件に合 致しない男性作業者が雇用されるようになっていることを明らかにした。男性作業者は基 本的に、緻密で根気のいるこのような作業に向いていないとかの女は言っているのだ。本 論筆者であるわたしも自分自身の体験を振り返って、インドネシアにおけるこの性差はそ の言葉の通りであるともろ手を揃えて裏書きしたい。プルバリンガの頭髪商品製造業界で 働いている女性は従事者全体の97%あるいはそれ以上を占めていると言うひともいる。 ヨーロッパからのつけまつげのオーダーが毎月40万セットから10パーセント増やされ たものの、熟練労働力を増やせないために増産に苦慮していると女性社長は述べた。増や された注文量に応じられないことそれ自体は何でもないのだが、長期的な視点からビジネ スにおける信頼関係に影響が生じることが懸念されるとかの女は不安を物語った。 別の国内資本中規模会社のオーナーは、増産を希望する大規模会社の間で熟練作業者のヘ ッドハンティングの応酬が始まっており、業界内に不健全な動きが起こるようになったと 語っている。熟練作業者ひとりひとりに高い給与をオファーして引き抜き合戦をする悪弊 が始まったのだ。 県行政は業界の大規模会社に対して、「毎年、中高卒業生県民が労働市場に参入しており、 2010年には11,880人が新規労働力として加わった。それらの労働力に教育訓練 を与えて熟練工に育ててほしい。」と呼び掛けている。[ 続く ]