「謝罪されない植民地化(5)」(2024年11月11日) アジアにある既存の主権国家を操って支配下に置くことも、VOCは頻繁に行った。その 原因はアジアの国で起こる王位継承などの内紛がメインを占めた。王位を巡って争う者の うちでVOCに協力的な者を手中に取り込み、軍事力を使って競争相手を滅ぼしてその者 を王位に付けてやる。新王がVOCのさまざまな要求を拒否できるわけがない。それでも 拒否するならVOCが滅ぼすまでのことになる。そんな国の王宮内にはVOCの手先が作 られて種々の策謀が渦巻く謀略の宮殿と化すのが普通の姿だった。とまあ、そうは言われ ているものの、世間一般の王宮というのは歴史を見る限り、VOCがいなくてもそうなる のが普通だったようにも思われる。 世界初の大型国際株式会社になったVOCはオランダの6都市にできたアジア貿易の会社 の連合体であったことから、その6都市は2002年を通して種々の催事を行うことを計 画した。展示会・フェスティバル・講演・討論会・書籍出版などだ。アムステルダム国立 博物館すらこの催しに協賛して、VOCに関する四つの特別展示会を計画した。同年1月 から既に開始された展示会は、VOCを描いた写真・絵画・デッサンなどを集めたものだ った。 3月20日のオープニングに先んじて行われたプログラムのひとつがヤハツ帆船デ ダイ フケン号航海の再現であり、この小型帆船はかつてVOCの要衝だったバタヴィア・セイ ロン・モーリシャス・ケープタウン・セントヘレナ・アセンション・アゾラなどを巡って 4月にアムステルダムに戻って来る日程ですでに旅立っている。かれらはVOC誕生祝賀 を先取りしているのだ。 このダイフケンの航海は本サイトの中でかつて紹介したことがある。 「ヤハツ帆船ダイフケン(前)」(2020年10月28日) https://indojoho.ciao.jp/2020/1028_1.htm 「ヤハツ帆船ダイフケン(後)」(2020年10月30日) https://indojoho.ciao.jp/2020/1030_1.htm しかしオランダが企画したこの祝賀行事に対する抗議の波が、企画中から既にオランダに 打ち寄せてきた。前年12月にはヨハネスブルグでCitizens for Truthと自称する民間団 体が喜望峰で行われる計画のVOC祝賀行事に対する抗議運動を開始した。かれらはVO Cの歴史が植民地に振り撒いた諸悪の遺産に焦点を当てる国際会議を4月に開催する準備 を進めている。 ジャカルタのラスナサイッ通りにあるオランダ大使館の前でも3月20日に、インドネシ ア民族の矜持を守護する全国コミティと名乗るデモ隊が垂れ幕を掲げてオランダで行われ ている祝賀行事への抗議を表明した。 VOCがインドネシアにもたらした貧困と不幸と死という民族的な災厄がいまだに尾を引 いているというのに、それによって黄金時代を迎えたオランダがVOC創設を祝うという 心理がいかにインドネシアを卑しめているかということをオランダ人は認識しなければな らない。デモ隊のひとりは記者にそう語った。 オランダ国内でさえ、インドネシアの催事ボイコット表明をとりあげて祝賀式典催行委員 会の感受性の粗雑さを批判する声が一般市民の中に上がった。オランダ日刊紙NRCは、 委員会が「祝賀」の語を選択したことが最大の問題である、と書いた。その記事には、諸 外交官・大臣・女王・皇太子夫妻・多数一般市民のすべてが「記念」の語の妥当性をより 強く感じていると書かれている。 ヨリツマ経済大臣がVOCとグローバル会社との間に類似性は感じられないと語ったこと をNRCは引用し、またヨリツマ夫人が述べた「その催事に加わって祝賀するのは怖い」 という言葉も記した。夫人はその催事に関して、その祝賀は恥ずべき行為であり、インド ネシアがボイコットしたのは納得できる、とコメントしたそうだ。[ 続く ]