「傘と笠(13)」(2024年12月23日) さて、インドネシアの笠にチャピンというものがあり、caping jawa, caping ponorogan, caping buyuk, caping kalo, caping keropak, caping tehというのがジャワでのバリエ ーションだとイ_ア語ウィキペディアに記されている。そしてカリマンタンのseraungと いうダヤッ族の笠がcapingの仲間と説明されていた。インドネシアの伝統笠はその7種が ほぼすべてのような印象を受ける。 チャピンジャワは竹編みで円錐形をしており、農民や漁民がよく使っている。パンダン葉 で作った深めの円錐形のチャピンもあり、これはcaping gunungと呼ばれている。 チャピンポノラガンはポノロゴの郷土風チャピンを意味しており、形状は竹編みの筒型に なっている。ポノロゴの伝統芸能reogの演者や見物人がよく使うためにチャピンレオッと も呼ばれる。 形がトルコのフェズ帽に似ていることからサレカッイスラムのメンバーが愛好したことも ある。 チャピンブユッはポノロゴ風チャピンの変種で、現代的な竹編み帽子だ。たいてい小型で、 縁が円形に作られているものが多い。 チャピンカロはクドゥス独特のチャピンだ。平らに近い傾きの円形笊のような形をしてい る。縁に短い垂れが巻かれており、その垂れがさまざまな色で作られていて色による雰囲 気の差が出現する。クドゥスの伝統装束はチャピンカロを不可欠なものとしている。 チャピンクロパッはドゥマッの郷土チャピンで、チャピングヌンのような傾きの深いもの になっている。素材は竹よりもロンタルヤシの葉が使われるのが普通だ。 チャピンテッはその名の通り、ジャワ島の茶農園で作業者が使うチャピンだ。大型の笊の 中央部分、つまり頭に載せる部位だけがぽっこりと上に出ているような形状をしていて、 周辺部分はソンブレロのようにやたらと広い。 農民漁民一般が使うチャピンジャワとはつばの広さが大きく違っているのだ。その理由と して茶農園の作業者は農園作業に長い時間を費やすからと説明されている。太陽が低い時 の日射を防ぐことが意図されているのであれば、ジャワの農民漁民も同じようにそんな時 間に外で働いているのではないかという気がするのだが、どうなのだろうか。 カリマンタンのダヤッ族が使うチャピンであるスラウンも円錐形が基本ではあっても、今 では豊富なバリエーションにあふれていて、ヤシ殻を半分にカットしたような形から、頭 に載る部分だけ突き出た平べったいつばのものまで、種々雑多な形状をしている。つばの 広さも狭いものから広いものまで、いろいろだ。ダヤッ文化好みの、さまざまな明るい色 と模様が上面に描かれている。 チャピンの歴史については植民地時代に森林監視役人がそのユニフォームとしてチャピン をかぶっていたという話がある。植民地時代のジャワ農民の姿を見ると、現代のジャワ農 民がだれもかれもチャピンをかぶっているのとちがってチャピン姿はあまり見当たらず、 むしろ、役人や富裕者などの上流層がチャピン姿をしていたような印象を受ける。[ 続く ]