「傘と笠(14)」(2024年12月24日)

ラモガン県スコダディ郡スコリロ村では1940年代ごろからチャピン作りが始まったと
されている。昨今、この村でチャピンを作っているのはたいていが老齢の女性だ。

1960年代にポノロゴ県ジュティス郡カラングバン村でチャピンが作られていたという
情報が2017年の記事に書かれている。その当時、その村では生産者が25人いて、ひ
と月5百個を作って仲買人に販売し、仲買人はそのほとんどをブリタルやトゥルンガグン
の市場に送っている。ポノロゴで円錐形のチャピンはあまり売れないためにそうなってい
るというのがその記事の内容だった。

カラングバン村の生産者はたいていが老齢者で、片手間の小遣い稼ぎという趣が強いよう
だ。たいてい5日に1個できるが、しかし材料が全部そろっていれば、一日に1個作るこ
ともできると生産者のひとりは語っている。


クドゥス県ムジョボ郡グラン村の住民カムシルさんの記事が2011年のコンパス紙に出
ている。カムシル爺80歳の目はまだ達者だ。歩くときに前かがみになるくらいで、しわ
のよった指も細かい作業をてきぱきと進めている。爺はチャピンカロを昔から作って来た。
「若いころは一日に1〜2個作れたが、今は1個作るのに3日がかりだわい。」

そう言いながらアレンヤシの繊維を撚り合わせて作った糸をチャピンカロの縁枠の小さい
穴に通して縛る。

クドゥスのチャピン作り人はかれひとりでない。しかしクドゥスの伝統式婚礼で花嫁がか
ぶるチャピンカロを作る職人はかれひとりになってしまった。かれのチャピンは剥いだ竹
の表皮が使われている。


チャピンは農夫が水田や畑で作業をするときにかぶるものだが、牛やアヒルなどを放牧す
る番人もよくかぶる。農夫のチャピンは円錐形の尖った形をしている一方、放牧番人はも
っと平たくてつばの広いものをかぶる。カムシル爺はどんなチャピンでも作る。かれの作
るもっとも珍しいものがチャピンカロだ。

チャピンカロは円錐形でなく、平たい満月形をしている。普通の笊の形なのだが、薄く剥
いだ竹の表皮が同一の幅で放射状に天蓋を覆っている。ランチャガンと呼ばれるその薄い
表皮が天蓋の中央で重なり、両端は縁枠に縛り付けられる。その模様が細い竹で編まれた
天蓋に彩を添えているのである。

ランチャガンの模様を作り出すために竹編み作業がややこしくなる。制作にかかる手間は
普通のチャピンの数倍にのぼるだろう。グラン村でランチャガンを作る職人も今では80
歳のルジパ爺ただひとりになってしまった。竹細工職人はたくさんいても、チャピンカロ
に使われるランチャガンを作る者は他にいない。

クドゥスに生まれた女は昔、だれもがチャピンカロをかぶってパサルへ買い物に行った。
それがクドゥス女の典型とされ、結婚式に花嫁がかぶるものになった。しかし時代はもう
変わってしまった。日常生活で使われなくなり、かろうじて伝統行事や結婚式で使われる
ことがあるくらいだ。

円錐チャピンなら1.5〜2万ルピアで売られているが、チャピンカロは製法がやっかい
だから1個15万ルピアする。きっと、日常生活の中で気楽に扱える品物でなくなったと
いうことかもしれない。[ 続く ]