「大郵便道路(22)」(2025年01月14日)

その力関係のアンバランスを均衡させる要素としてジャゴアンが生まれた。格闘技や剣技
に長けた者が民衆の側に立って地主の動きをけん制したのだ。ジャゴアンが行う行為は法
的見地から見れば、すべてがクリミナルだった。

私有地制度をバックアップするコロニアル制度の中では、ジャゴアンが作るグループはな
らず者集団でしかなかった。しかしジャゴアングループはしばしば地主側および地主を保
護する植民地行政機構に横槍を入れた。


タングランの平坦で肥沃な土地では米や他の穀物あるいは豆類が大量に生産された。大豆
がそのひとつだったために、タングラン産のケチャップ(インドネシア語のケチャップは
トマトソースのことではない)はVOC時代から高級品として英名を馳せた。金さえあれ
ば誰もがkecap Bentengを買った。その元祖ケチャップベンテンは今でも製造を続けてい
て、タングランのPasar Lamaへ行くと手に入る。タングランのパサルラマはチナベンテン
のセンター地区であり、今では一般庶民が食道楽をする場所とされていて、ジャカルタの
グロドッパンチョランとよく似たポジションにある。

実は、インドネシア語kecapの発音にケチャップと弱母音クチャップの二種類があって、
意味が違っているのだ。ケチャップは大豆を発行させて作るソースで、ケチャップマニス
もあればケチャップアシンもある。ケチャップという言葉自体は甘さや鹹さを示さないか
ら、ケチャップ=ソイソースではあっても日本の醤油にはならない。

もうひとつのクチャップは食事の時に出る口内のクチャクチャという音、あるいはおしゃ
べりの時にペチャクチャよくしゃべるのを表現する擬声語として使われる言葉であって、
ソースとはまったく関係がない。

ケチャップベンテンがナンバーワンだという世間の評価を洒落て、スカルノがmengecapと
いう言葉を流行らせた。「ナンバーワンにする」「ナンバーワンだと言う」「ナンバーワ
ンだとおだてる」などの意味で使われる。

ところがこの語源にも異説が作られて、クチャップ音を出すのは食事がおいしいからだと
いうことがらに結びつけてナンバーワンの結論に導いた。こうなるとムングチャップもム
ンゲチャップも同じ意味になってしまう。

タングラン産の竹編み帽子も世界を風靡したことがある。1887年にタングランからフ
ランス向けをメインにして1億4千5百万個の竹編み帽が外国に輸出された事実があるの
だ。そのころタングランの竹編み帽はヨーロッパや中南米の港湾労働者のユニフォームに
なっていたそうだ。しかし諸外国で似たようなものが作られるようになり、更に工業化に
よって競合品が出現するようになると、人間が手編みで作っていたタングラン産の帽子は
敗退せざると得なくなった。

1921年に出版されたオランダ東インド百科事典のタングランの項には、次のような解
説が見られる。
タングランはafdeeling Tangerangの首府であり、殷賑な商業センターのひとつでバタヴ
ィアレシデン統治区に属している。1905年の人口は4,400人で、ヨーロッパ人8
0人、華人などの東洋人居住者およそ1,350人がそこに含まれている。タングラン産
の有名な商品はケチャップベンテンだ。バタヴィアで非常に高い人気を誇っている。

その百科事典からおよそ百年前のダンデルスの時代にタングランは西バタヴィアと呼ばれ、
副レシデンが統治していた。

日本軍政期にタングランは軍事訓練センターになった。そのころ、タングランはブパティ
の下のウェダナが統治する行政区だったが、軍政監部は昭和18年12月27日からタン
グランを県に指定した。そのため、現在のタングラン県発足記念日は1943年12月2
7日とされている。[ 続く ]