「ブタウィの結婚(終)」(2025年03月24日)

もっと甚だしいのは、花婿を拉致して隠してしまういたずらだ。新婦の家に向かう日の朝、
悪友がやってきて新郎を連れ出したまま家に帰さない。新郎新婦の家族には何も知らせな
いから、新郎がいなくなったのを知った新郎の家族も、そして新婦の家族も大騒ぎするこ
とになる。

新郎を連れ出してプンチャッへ行き、ヴィラを借りてそこで密かに睡眠薬を飲ませて眠ら
せたり、下剤を飲ませて動けなくさせる。しかしそれでも何とか、新郎は新婦の家に夕方
には送り届けられるのである。

そうやって新郎はさんざんにいたぶられ、悪友たちのおふざけの餌食にされるが、最終的
に新郎と新婦がプラミナンに並んで座り、祝い客の祝い言を受けるところはちゃんと守ら
れる。新郎が新婦の家にはじめて泊まるその夜はシャマルと呼ばれる結婚披露のパーティ
が開かれてふたつの一家が招く招待客がやってくるのだ。

しかし夜のパーティにやってくるのは男だけであり、女性客は新郎がやってくる前の、そ
の日の午後から夕方にかけて催される女たちだけの結婚祝いにやってくるのである。


ところがなんと、そんなシャマルの場にまでいたずらを続ける悪友もいた。新郎の着てい
るスーツの上着のボタンに南京錠がはめられているのに気付いた新郎は、プラミナンに落
ち着いて座っていられない。あるいは新郎のスーツのポケットにそっと生卵を入れておき、
ポケットを外から叩いて卵を割る。中には新郎のスーツのネクタイをはずす者がいたりす
る。

新郎はもちろん、悪友のそんないたずら攻撃に抵抗する。新婦や新婦の一族が怒らないは
ずがなく、抵抗する新郎を守ろうとして新郎に手を貸すのである。こうしてシャマルの宴
は盛り上がる。

宴をさらに盛り上げるためにオルケスガンブスが音楽を奏でる。そのリズムに合わせて男
ばかりの客がひとりでくるくる回りながらジャピンを踊る。ガンダランが盛んだった時代
に高い人気を誇ったブタウィのオルケスガンブスはサレ ビン タリブ、アル ワタン、ア
ル ワルダなどだったそうだ。

シャマルで供される食事はたいていナシクブリ、おかずはグライカンビン、カリ、スムル
カンビンなどだった。それにアシナンやパイナップルが添えられてコレステロールを減ら
す。他のアラブ菓子類なども大量に用意され、シャマルはマカンブサールになるのが普通
だった。

アラブ人プラナカン社会からガンダランの行事が姿を消してもう久しい。かつてガンダラ
ンの対象にされた今の老人たちは「ありゃあ忘れられない思い出だねえ」と笑って昔を懐
かしんでいるそうだ。[ 完 ]