「ソロのバティッ(12)」(2025年04月24日) バティッ産業界を襲った時代の変化に関連して、ンボマセが権力を振るう女性上位のバテ ィッ事業構造を嫌悪する者たちがその種の実例を消滅させようとして企んだ背景も無視で きないと語る声もある。 ラウェヤンの社会的地位を貶めるために作られた話が何世紀も前から世に広められた。マ タラム王宮での断頭刑をlaweの刑と呼ぶ話では、王族が王の怒りに触れて死刑をたまわり、 遺体は埋葬されるが頭は竹に刺して王宮の北大門にさらされる。あるいは、ラウェヤンの 女は夫に早死にをもたらすというbahu laweyan(発音はバウラウェヤン)の話などがいま だに知る人ぞ知る伝説として物語られている。 バウラウェヤンの物語はジャワの古文書にも記されており、こんな話が語られている。 パクブウォノ2世が戦争に赴くためにひとりのラウェヤン女性バティッ事業主に馬を貸し てほしいと依頼した。そして王はそのラウェヤン女性に王宮で暮らそうと誘いをかけた。 ところがその女性は王の言葉に従おうとしなかった。絶対権力を持っている王は怒った。 お前たちラウェヤンの女は一生、身も心もさいなまれて苦しむがよい。ラウェヤンの女と 結婚した男は早死にするのだ。お前たちの夫になった男はどんどん死んでいく。お前たち ひとりひとりは7回夫を早死にさせるのだ。 世間に広まったバウラウェヤン女の伝説には尾ひれが付けられて、そのうちにラウェヤン の土地とは関係のない話になり、夫を早死にさせる凶運の女というジャワ人好みのミステ ィック物語に変身した。バウラウェヤン女の左肩には霊的存在になった爬虫類が自分のも のであることを示すために付けたコイン大の印があり、その女の夫になった男は早死にす るのである。霊界の者と女を奪い合えば、人間の男は不幸な結果を余儀なくされるという ことなのだろう。 しかし夫に凶運をもたらすのでないバウラウェヤン女の話もある。これはグンドゥルウォ が女児や少女を苦しめるためにかける術であり、娘の年齢に達すると身体の苦痛のために 話ができなくなるというストーリーだ。ラウェヤンという地名とどう関係しているのかが よくわからない話だが、多分ミスティックストーリーはラウェヤンという土地に囲い込む ことがむつかしいのだろう。 王宮の権威に反抗するラウェヤンを王宮に属す人間が憎むのは当然の話だ。ましてや男優 女劣の価値観に覆われた父系性社会がンボマセに支配されている空間などあってならない ものと見なすのも当然だろう。植民地時代でさえ、オランダ東インド政庁はラウェヤン上 流商人たちの民族運動活動家への支援を重大視し、ラウェヤンのバティッ事業を妨害する ことを行っている。それ以前に、ラウェヤン住民のオランダ統治への反抗的な態度が既に 行政官の不評を招いていた。 ラウェヤンを打ちのめして勝利の美酒に酔ったのがオルバレジームだったという見解もあ る。オルバ政権が経済開発政策を展開する中で、工業化が強い勢いで進められた。バティ ッ産業もその政策の対象の中に含まれた。 1970年代にラウェヤンに近いスコハルジョに外資とオルバクロニーが大規模繊維製品 工場を建て、その工場では機械プリント方式でバティッモチーフを印刷した布が大量に生 産された。その結果、手描きとチャンティンスタンプでモチーフを描いていたラウェヤン のバティッ布の売れ行きが突然ダウンした。ムリヤニはその当時を回顧する。 それまでのようにスラバヤに製品を送ったところ、返品されたんです。いくつもの店でそ れが起こったから、わたしは夫と一緒にスラバヤのトゥリ市場へ見に行きました。そして 驚きでモノが言えなくなりました。売場も倉庫もバティッがあふれているんです。ジャカ ルタからサプライされているというのが店の話でした。しかも、ラウェヤンとの取引はい つも即時払いだったものが、そのあふれるほどのバティッは後払いになっていました。か れらは何百コディものバティッを支払いも受けずに市場に放出していたのです。 わたしは涙が出ました。ラウェヤンの製品をいったいどこに売ればよいのか、もう目の前 が真っ暗になりました。[ 続く ]