「ロティ ロティ・・(4)」(2025年10月09日) 北スマトラ州プマタンシアンタルの地元のパン屋の中で有名なのはストモ通りにあるトコ ロティ「ガンダ」。4x10メートルの店内は常に購買客であふれ、店の表通りは駐車し た車で渋滞が起こる。タパヌリ・サモシル・シボルガなどの住民がこの店にやってきてパ ンを買って帰る。商用でこの町にやってきた他州の住民も、その人気につられてこの店に 立ち寄る。 ガンダのパンはミルクを混ぜてパンダンの香りを付けた普通のパンだが、客が買う時にパ ンを割ってクリームを塗り、チョコスプリンクスを振りかけてから小さく切って包装紙に 包んでくれる。だから客は買ってすぐに店を出るというわけにいかないのである。 1992年にボゴールで開業したトコロティ「フェヌス」が小型のパン「ロティウニル」 を売り出した。1980年代に指人形劇のTV映画シリーズSi Unyilが大ヒットし、その 名前にあやかって命名したそうだ。一口で食べられるパンというユニークさが評判を呼び、 ボゴールを訪れる者はみんなそれを土産用に買ったから、店の表の通りは駐車する車で狭 くなり、渋滞の原因になった。 この小型パンは30種類の味のバリエーションがあって、チーズソーセージやスイートコ ーンの人気が高い。客はたいてい30個入りや60個入りの箱を一杯にして買って帰る。 店が開業したころ、小型パンのロティウニルは商品ラインのひとつであり、普通サイズの パンも売られていた。ところが小型パンの売れ行きが圧倒的だったために、一年後商品ラ インをロティウニルひとつに絞ったのだそうだ。 インドネシアが独立した後、国内のそれぞれの町にパン屋が店開きした。パスルアンの市 内ではトコロティ「マタハリ」が地元の有名なパン屋さんだ。それらのわが町のパン屋は 全国ブランドや外国ブランドのパンが市場の陣取りを始めたあともなかなか人気が衰えな い。これも一種の地元への愛着のなせるわざかもしれない。 2012年3月14〜16日にコンパス紙R&Dが全国12都市で行ったアンケート調査 結果は次のような内容になっていた。回答者数677人。 質問1.あなたはよくパンを買って食べますか? 回答1.イエス80.1%、ノー19.5% 質問2.5年前に比べてあなたやあなたの一家が消費するパンの量は増加していますか? 回答2.増加している28.4%、変わらない54.4%、減っている16.8% 質問3.地元で作られているパンの魅力は何ですか? 回答3.廉価34.3%、他所のパンに負けない美味しさ31.3%、簡単にどこでも買 える25.3%、高品質で衛生的3.5%、愛好心1.6%、国産品愛用0.1% そのころ、インドネシアのパン消費は佳境に入っていた。ユーロモニターの公表によれば、 インドネシアは2010年に国民一人当たりのパン消費が金額ベースで前年の1.2米ド ルから1.5米ドルに25%もアップしていたのだ。オープンキッチンのブティックパン やフランチャイズ制の全国ブランドパンが続々と店開きしていた時代だった。 自分の店を構えるパン屋は郷土のブランドパンとして地元民の郷土愛を一身に浴びていた ものの、低所得層庶民にとっては容易に足の向かない店になった。店を持たず家内工業的 にパンを量産して巡回パン売りに売り歩かせる生産者が付けたブランドが低所得層庶民に とっての郷土パンになった。最初はブランドもなく、包装しないままで販売されるものが 多かったようだが、競争が始まると自ずと体裁が整えられていった。 この種の生産者の作る製品はロティカンプンと呼ばれた。巡回物売りが減少して来た昨今、 地方部では雑貨ワルンに商品を置く生産者が多いようだ。わたしの住んでいるバリ島の村 の近辺にある雑貨ワルンには、ブランド名を付けたロティカンプンが種々置かれている。 価格もコンビニで売られている商品より廉い。 しかし置かれている商品は甘い菓子パンばかりであり、食パンや塩味の菓子パンは手に入 らない。パンというものが庶民にとってどういう位置付けになっているのかをそこから推 察することができそうだ。[ 続く ]