「若者たち(終)」(2025年10月31日) 2016年にコンパス紙R&Dは首都圏の高校生に対するアンケート調査を行っている。 首都圏にある国立私立の10高等学校にアンケート用紙を配布して提出されたものを集計 した。男子236人、女子268人の合計504人がその母数だ。 このアンケートはかれらが持っている価値観を「スッゲー!」というキーワードで測定す るものだった。アイドルアーチストに似た服装やアクセサリーを身に着けるのは「スッゲ ーことですか?」といった質問だ。 その質問に対して16.7%がスッゲー、56.5%がフツー、20.8%がスゴクない、 6.0%がヒッデ―と回答した。 質問 学校内の活動の中でプレステージを示すのはスッゲーこと? 回答 スッゲー82.9%、フツー14.7%、スゴクない2.2%、ヒッデ―0.2% 質問 友達が大勢いるのはスッゲーこと? 回答 スッゲー67.1%、フツー31%、スゴクない1.9%、ヒッデ―0% 質問 学校内組織のリーダーになるのはスッゲーこと? 回答 スッゲー59.5%、フツー31.9%、スゴクない6.7%、ヒッデ―1.9% 質問 最新型スマホを持っているのはスッゲーこと? 回答 スッゲー31.2%、フツー63.3%、スゴクない5.4%、ヒッデ―0.2% 質問 学校の人気者をカレ/カノジョにするのはスッゲーこと? 回答 スッゲー22.2%、フツー65.7%、スゴクない10.1%、ヒッデ―2% 質問 ソーシャルメディアでフォロワーをたくさん持つのはスッゲーこと? 回答 スッゲー16.9%、フツー56.7%、スゴクない24%、ヒッデ―2.4% この世代の若者たちは終日ソーシャルメディアにかかり切りのナルシストたちだと言われ ている。だがもちろん、かれらの日常生活がそれだけで終わっているはずがない。学校生 活や友人との交際の中で自我を見極めると同時に他者から自己を認めてもらうことを求め る時期にあるかれらが、自分の認識している価値あるものごとに向けて自己を駆るのは当 たり前の反応だ。 そんなかれらがスッゲー人物と見なしている存在とはいったい誰なのか?なんと、自分の 母親をスッゲーと認める高校生が過半数いた。ちなみにこの質問への回答はこんな内容に なっていた。 母 57.5% 父 16.9% アーテイスト 5.4% 政治家 5.0% スポーツ選手 4.4% インドネシアの夫婦関係では虐げられる妻の図式がステレオタイプになっている。そのた めに、ジェンダー差別の中で自分を保護し育ててくれた人間への慈しみという心情が子供 の心に湧くことはあり得るように思われる。一方そうでなくて、子供の精神的成長は自我 の独立を目指して親に反抗し親を乗り越えていくものだという原理を持つ文化の目から見 れば、子供の精神的な乳離れの問題に関連付けることもできそうだ。インドネシアの子供 たちには概して親に対する反抗期の出現があまり顕著でないという現象もまた別に存在し ているのである。 インドネシア文化の中で志向されている子供の独立とは、親に依存しない独立した人格と 精神を持って親と対等のひとりの大人になることよりも経済面での自立という意味の独立 が圧倒的に強く、生活面ではべったりと親を尊重しいつまでも親を助け、親を支える人間 としてふるまうのを美徳とする、精神面での独立と呼びにくい形態になっている。 インドネシア文化の中にある親子関係の理想像は多分、伝統アジア型のそれに強く影響さ れて形成されたものであって、西洋スタイルの影響がまだ弱い段階にあるように感じられ る。しかしライフスタイルと情報の共通化が次の世代の観念を変えていくことは間違いな いはずだ。[ 完 ]