「遊びの伝統(8)」(2025年11月08日)

コマ回しは基本的にひとりで行う遊びだが、コマを回す個人が集まってゲームを行うこと
ができる。回転時間の長さを競うもの、強さを競うもの、音の良さを競うもの・・・

リアウのシアッあるいはバタムやナトゥナなどの島嶼部・東ジャワのラモガン・バリ・ロ
ンボック・カリマンタンの諸州ではコマ回し大会が毎年開催されており、中には全国から
参加者が集まってくるものもある。ロンボッ島東部にある山中の村では、今でも村民が毎
日コマで勝負をして遊んでいるそうだ。

インドネシアのコマ回し全国大会というのはいまだ開催されたことがなく、各地方で郷土
のコマ回し祭りが行われているだけ。各郷土ごとに独自のルールに従って行われているた
め、外来者はその土地の伝統に合わせなければならない。愛好者が政府を巻き込んで全国
共通ルールを定めようとしているものの、さまざまな困難があるらしい。

全国共通ルールを定めてスポーツ競技のひとつに位置付け、インドネシア全国スポーツ大
会PONの公式種目にし、その上で東南アジア競技大会の公式種目に推薦するというのが
かれらの描いている夢だ。そうすることによってコマという伝統遊びを現代に復活させる
ことができる。政府の関りが求められているのは、愛好者たちの奥深い計画がその後ろに
込められているためだ。


東カリマンタン州クタイのコマは下が円錐形、上は頭があって肩が末広がりの円形になっ
たものが一般的で、胴の太いものや細いものがある。サイズや形状はさまざまだ。素材は
木で作られるのが普通だがこれも価格によっていろいろな木が使われている。樹種として
はbanggeris(トワラン)が最適とされており、ulin(ボルネオテツボク)よりも人気が
高い。

バンゲリスは木目が詰まっているために硬くて重い。喧嘩ゴマに最適な性質がそれなので
ある。同一サイズ同一形状のコマで比較するとバンゲリス製はウリン製より重いのだ。ク
タイの喧嘩ゴマでは、二組のメンバーが一対一で個々に行うチーム戦もあれば、三人が三
個のコマを激突させて競うberajaanと呼ばれる方式もある。おとなしい競技の代表が回転
時間を競うbeturaiだろう。

一人遊び用のコマと喧嘩ゴマは品物が違っている。コマにはそれぞれ名称が付けられてい
て、一人遊びではpendadaやperangatが使われる。上半分と下半分の形状が相称に近いの
がその特徴だ。喧嘩ゴマにはpelele、buong、tungkul、bengorなどがあって、球形に近い
形状をしている。球形にすることで他のコマと衝突したときに触れる面積がより小さくな
るのだそうだ。

人間が集まって楽しみ、同時に相互の親睦を深めるための媒体であるドラナンのひとつと
して、クタイのコマ遊びは2千年近い歴史を持っている。そればかりかこの遊びはジャン
グルの中に糧を求めるカリマンタン人に筋力や身体コントロールの訓練をも与えてきた。
昔からかれらはジャングルに入ったり畑に行って仕事をする前にコマを回して腕のウオー
ムアップをしたという話が語られている。とはいえ、都市生活者にとってはもうジャング
ルとの暮らしがほとんど消滅しかかっているように思われるのだが、それでもひとびとは
相変わらずコマを回して楽しんでいる。[ 続く ]