「遊びの伝統(終)」(2025年11月09日)

西カリマンタンのポンティアナッでもコマ遊びは盛んだ。コマはダヤッ族の伝統遊びでも
あり、決してムラユ人が持ち込んできたものではないと信じられている。ジャングルの木
々を支配する存在であるSajinte Jubata TapakngのNek GasikngとNek Abakngが自分の化
身として回転するコマを作ったとされていて、そのためにタパクンの木の根の節で作られ
たものが最高と言われている。

西カリマンタン州ポンティアナッ県の県庁所在地ムンパワでかつて開かれたコマ回し大会
には全国から我こそはというつわ者たちが愛用のコマを携えて集まって来た。

西カリマンタンの大会では、グランドに三重の同心円が描かれる。大人用のものは直径が
50、125、200センチ、子供用は50、100、150センチの円で、真ん中の円
に10、その次が8、一番外の円に6という数字が書かれる。そのスペースに与えられた
評価点数だ。プレーヤーが投げ入れたコマがどのスペースで回転するかがひとつの評価ポ
イントになる。

大会はまずuriと呼ばれる回転時間を競うゲームから開始されて、ウリの勝者には15ポ
イントが与えられる。続いて喧嘩ゴマpangkakに移り、対抗者が回したコマにウリの勝者
が攻撃を行う。攻撃が三回行われてから攻守ところを替えて対抗者がウリの勝者を攻撃す
る。

その過程を採点者が評価する。コマが三層の円のどこにあったか。プレーヤーの足がどの
位置にあったか。コマの回転時間はどうか、紐の位置はどうか。遊びがスポーツにされる
ようになると、いろいろと細かい事柄が水面上に立ち昇ってくるようだ。


ポンティアナッのコマはクタイのコマと形状がまた微妙に違っている。使われる樹種とし
てはmbaris, kranji, belian, akasia, asam jawa, petai cina, jeruk sambalなどだそ
うだ。そしてポンティアナッには有名なコマ踊りtari gasingがある。コマ回しの遊びと
回転するコマのイメージを盛り込んだ群舞で、米作りと自然の恵みへの感謝を織り込んだ
内容だと解説されている。tari gasing pontianakでユーチューブ検索すれば動画が見ら
れます。一般的な伝統舞踊よりは即物的な印象が強いために、わたしのような舞踊芸術の
門外漢が見ても楽しい。このコマ踊りがいつ作られたのかはよくわからない。イ_ア語AI
はただ伝統的な舞踊だとのみ述べている。

独楽は世界中のほとんどの国で遊ばれている玩具のように思われるものの、コマのイメー
ジでダンスを作った民族というのは他にあまり見られないようだ。ダヤッ族のユニークさ
をその事実が示しているのかもしれない。[ 完 ]