「葉巻(3)」(2025年12月13日) チトスを略称にするチランダッタウンスクエアが南ジャカルタにオープンしたのは200 2年のこと。その数年後にコニサー・ワイン&シガ―ラウンジがモール内に開店した。ガ ラス張りの明るい店内は外から丸見えで、混んでいる時は店内がほとんど埋め尽くされて いたのをわたしは目にしている。客たちは自分がワインやシガーを愉しみながら、外を通 るひとびとにモダンライフスタイルを示す生き展示品になっていた。 チトスはアップトゥデートなファッションを見る場所であると同時に見せる場所としてそ れに敏感なひとびとが集まるモールになった。つまり消費者が最新ファッションを見ると 同時に自分のファッションを他の消費者に見せる場所という意味だ。産業界も自分の商品 を見せる場所に使っているのは他のモールと違わないものの、やってくる消費者が自分を 見せる場所として使うことはどこのモールにも起こるわけではない。 ミドルクラスは流行に敏感であり、容易に影響されて追随する傾向が高い。中でもヤング エグゼキュティブ層はその傾向が強い。それらが相互に影響し合って流行を作り出してい く。コニサーはベストオブザベストの場所を得たと経営陣のひとりは語っている。 2008年ごろまだ21歳だったビヌス大学の学生はチトスへ遊びに行ったとき、コニサ ーの店内で老いも若きもがリラックスしながら二ガルを愉しんでいる情景を目にして興味 を抱いたと物語る。「ハリウッド映画のマフィアのボスたちが葉巻をくわえているシーン を思い出しました。とてもカッコいい。葉巻を吸う姿はその人物の階級が上のランクであ ることを示しているように見えるんですよ。」 DJをしている24歳の若者も葉巻は上流階層のイメージを作り出すと語る。かれも2年 前から葉巻を愛用するようになった。「一年くらい前から、二ガルは絶対にジャカルタの 若者の間でトレンドになると感じはじめました。スタイルに関するものごとはすぐに流行 しますからね。ちょっと前からワインラウンジがはやるようになったでしょう。葉巻はそ の流行がもたらした副産物のように思えます。たいていのワインラウンジで葉巻も売られ ていますから。」 プラザスナヤンにもモジート・カクテル、ワイン&シガーラウンジがボーリング場の傍に オープンした。モジートはヤング層のアクセスを重視して場所を選択した。だから客層は 若者が大半を占め、中には高校生くらいのABGもやってくると従業員のひとりは語る。 「午後に高校生たちが下校途中でここに立ち寄り、二ガルしてから帰宅することも頻繁で すよ。数人の仲間連れでやってきて、一本数万ルピアの廉価品葉巻をひとつ買い、みんな で回し飲みしてます。全部飲み終わらなかったら残った部分を切り開いて、葉をもみほぐ したりして。でも時にはキューバ産の葉巻を買うこともあります。『どうだ。マフィアみ たいだろう。』なんて言いながら。でも本当のところ、ABGにはまだ葉巻の美味しさが 分からないはずです。かれらにとって重要なのはカッコよさなんだから。」 [ 続く ]