「ナイトトレイン(2)」(2025年12月22日)

2002年のコンパス紙に夜行列車の乗車ルポが掲載されている。記者はパサルスネン駅
からスマランポンチョル駅までの夜汽車の旅をTawang Jaya号で行った。1984年に運
行が始まったタワンジャヤ号は最初、ジャカルタとスマランから双方向に向かう夜汽車と
してスタートしたが、2014年にジャカルタ発の便が昼間の運行に変更され、続いて2
015年になって運行時間帯が入れ替えられてジャカルタ発が夜、スマラン発は昼という
形になった。さらにその後タワンジャヤ号はエコノミー列車に加えてもっと快適なプレミ
ウムエコノミー列車を導入し、ステータスの異なる二種類が運行されるようになった。

現在のタワンジャヤ号エコノミー列車夜行便の発着時刻表は次のようになっている。
Pasar Senen   18:25
Cikarang      19:03
Haurgeulis    20:16
Cirebon Prujakan  21:17
Brebes        22:08
Pekalongan    23:10
Semarang Poncol   00:20
(パサルスネンだけが発時間で、他はすべて着時間。他にも停車駅はたくさんある。)

2002年の運行時刻が同じだったかどうかはわからないが、多分もっと遅かったように
推測される。記者の乗った客車の中は、二人掛けの座席が対面している配置になっていた。

通路の向こう側の席にいた四人の男性のうちのふたりは22時に列車がジャティヌガラ駅
を出たあと、椅子の下に新聞紙を敷いて横たわった。もうふたりはそれぞれが座席の上に
あがって足を伸ばす。椅子に上がると身体全体を横にすることができないから、身体を一
部折り曲げながら眠るのである。どちらの体勢が快適な眠りを楽しめるのか、それにはき
っと一長一短があるだろう。その夜、その客車に乗った44人の乗客のうちの14人が床
で眠りをむさぼったのである。

一家族らしいグループの中にいたジルバブの女性はグループから離れて乗降扉に近い床に
ゴザを敷き、幼児を連れてそこで寝た。他の乗客や物売りがしばしばそのすぐそばに足を
下ろして行き交うにもかかわらず、そんなことをまったく気にしない母と子はぐっすりと
眠る。通るひとびとの方が、床で眠っている者を邪魔しないように気を遣っているようだ。
母親はときどき目を覚まし、眠っている幼児の頬に口づけする。

記者の座席脇の通路でも、列車がチカンペッ駅を出たあとすぐにふたりの若者が新聞紙を
床に敷き、頭を突き合わせて眠りに落ちた。古新聞はなんと、朝出たときと同じ価格で販
売されているのだ。

全32ページのコンパス紙は朝2千ルピアで販売されている。読んだ者の中にはそのまま
それをゴミ箱に投げ込むひともいる。さらにそれを回収して夜にもう一度販売する者がい
る。夜には8ページ分が5百ルピアで売られる。読むためでなくて床に敷くために。


列車はハウルグリスに近付いた。あと5分で0時になる。床で眠っていた若者のひとりが
ガバと身を起こした。テレビシリーズ「ティンティン」の登場人物キャプテンハドッのよ
うに口は罵詈雑言と呪いの言葉をつぶやいている。かれは着ているTシャツを両手でバタ
バタとはたいてから、その裾で口の周りを拭いた。

かれのTシャツの袖からまだ若いゴキブリがポロリと落ちた。若者はすぐにゴム草履を手
にして襲いかかる。だがゴキブリの方が一瞬速かった。九死に一生を得たゴキブリは座席
の脚の下に潜り込んだ。

まるで何事もなかったかのように、その若者はまた夢の世界に戻って行った。ただし今度
はTシャツの裾を顔まで引き上げて口が隠れるようにしたのだ。人間の口の中の食べかす
を狙うゴキブリの大胆不敵さは驚嘆ものだ。エコノミー列車はさまざまな人間とゴキブリ
とダニを乗せて走る。445KMの遠距離をわずか22,500ルピアで運んでくれる乗り物はも
う他にない。オンボロのガタガタバスでさえ、そんな金額では客を乗せない。大赤字にな
るに決まっているのだから。[ 続く ]