「インドネシア鉄道史(74)」(2025年12月23日) 走行中のエコノミー列車スレロ号の窓から見える風景はゴム農園・油ヤシ農園そして湿地 原。ジャワ島の鉄道があまり揺れないのにくらべてスマトラ島の鉄道が激しく揺れるのは、 オランダ人が資源と物産を運ぶために鉄道を作ったためで、人間を運ぶことを念頭に置い ていなかったからだ、とスマトラ島南部地方のひとびとはコメントする。 スレロ号の客車内で連結部に向かって歩いている中年の男性がひとりあった。すると突然 列車が大きく揺れた。その男性は即座に近くの手すりにしっかりと掴まった。さもなけれ ばかれは床から放り投げられていただろう。船のように絶え間なく揺れ続けているこの列 車の単調さにバリエーションを与えるかのように、そんな大きな揺れのアトラクションが 加味されている。それは決してルブッリンガウ〜パレンバン線だけの特徴ではない。バン ダルランプン〜パレンバン線でも似たり寄ったりの現象なのだ。 ルブッパカムから乗った相客のひとりが記者に言う。「スマトラで汽車に乗るのはジャワ と全然違う。スマトラでは客車の中で揺れっ放しだ。エコノミー客車だからじゃないよ。 クルタパティからタンジュンカランへ行くエグゼクティブ列車のファジャルウタマI号に 乗っても揺れに関しては大差ない。客車内にはテレビが4台備えられていて、VCDで映画 が流されているが、ショックがあると画像が途切れてスピーカーの声も震える。」 5両の客車と食堂車1両で構成されているスレロ号を引く1983年製の機関車も疲れ切 ったありさまで走っている。最適巡航速度で走る続けることができず、機関士はアクセル とブレーキの操作で大忙しだ。速度を緩めたあとまたスピードを上げようとアクセルを強 めるが、速度はゆっくりとしか速まらない。木の棒が左側の扉を閉めておくために使われ ているし、スピードメーターは死んだまま。 列車の揺れが激しいのは線路が摩耗しているからだと機関士は説明した。摩耗した線路の 上を高速で走ると、引いている客車が脱線する可能性があるのでたいへん危険だとかれは 記者に物語った。 そのうちに列車はスピードを緩めて汽笛を鳴らした。プラブムリ駅に到着したのだ。そこ で石炭貨物列車の通過待ちをするために10分間停車する。 ZSSが運行させていた路線の広範なスパンにわたって、最初に敷かれた線路がいまだに使 われている。パレンバン〜ルブッリンガウ線も例外ではなく、専門家の話では全長375 KMのうちの70KMが年代物のレールであり、レールの種類はR25とのことだ。その路線で 使われている最高品質のレールはR54なのだが、パレンバン〜プラブムリ間はそれより劣 るR42がメインに使われているそうだ。 おまけに一本の長さが12メートルという短いレールが使われている場所もあって、その 区間で速度を上げると安定性が低下する。摩耗してやせ細った線路を走る列車は揺れや衝 撃を防ぐことがむつかしい。カーブが線路の摩耗を促進させるのだが、半径3百メートル 未満のカーブは特に激しい摩耗を引き起こす。 国鉄側の話によれば、摩耗線路の取り換えは鋭意行われている。1995〜1996年に はラハッ〜プラブムリ区間の不良線路交換とアップグレードが行われた。1980年代に はパレンバン〜バンダルランプン区間の60%がR54に取り換えられたそうだ。 しかし現実に、2003年のルブッリンガウ〜パレンバン鉄道の旅で、椅子から尻が跳び はねるような衝撃を記者は体験しているのである。[ 続く ]