「ジャワの大砲(15)」(2026年03月25日)

第二軍団からマラカ城市への砲撃が開始された。チェッバンの弾丸が空を飛んで樹木や建
物・家屋に火をつける。城市南部で起こった火災は南風に煽られて町の中心部に向かって
いる。城壁に置かれたポルトガルの大砲がジャワの軍船に向けて砲火を放つ。しかし圧倒
的な数のチェッバンによる集中砲火がポルトガル兵を城壁から排除した。ポルトガルの大
砲はチェッバンの砲火に妨げられて第二軍団の船にたいした損害を与えることができない。
大砲が発射するココナツ大の鉄球が一隻の舷側をうち破り、船腹内に転がった。するとす
ぐに内側から木の板が穴に当てられて修復作業が行われた。

何時間も続いた陸上の戦闘の結果が見え始めた。陸上での撃ち合いが下火になって来たの
だ。陸上侵攻軍がマラカ城市をほぼ制圧しかかっている。ところが第一軍団合同軍が作戦
計画に背いて船を空っぽにしたため、第二軍団は兵士を上陸させることができなくなった。
ウヌスはカントマナに伝令を送った。すぐに必要な数の兵士を船に戻して海上警備態勢を
回復させよ。

そして第二軍団の右翼船隊に新たな命令を与えた。第一軍団の北側に移動して警戒配備に
つけ。北方への警戒を特に厳重にせよ。マグリブの礼拝時間が近付いていた。ウヌスは側
近に言った。「第一軍団のヘマのおかげで計画が狂ってしまった。今夜は特に厳重な警戒
を行え。明朝に輝かしい勝利の日の出を迎えるために。」

夜のとばりが降りた。マラカ城市内は火災のために明るい。カントマナの使者が小船でや
ってきて口上を伝えた。「任務は完了し、今はウヌス提督の明朝の上陸のための準備を行
っています。」

ウヌスはそのカントマナの幕僚将校に返事を与えた。「即座に各軍船に兵員を戻し、警戒
態勢を回復させよ。」

しばらくしてから使者がもう一度やってきてカントマナの口上を伝えた。「船上任務の兵
士たちが敵を追って内陸部に入っているので召集にもう少し時間がかかるが、戻って来れ
ばすぐに命令を実行します。」


緊張と不安に満ちた夜が明けた。青色がかった透明な空の下で輝く太陽が光芒を放ち、第
二軍団の船上に降り注いでいる。第二軍団の各船は昨夜着いた位置を維持している。第一
軍団合同軍の船も昨日の午後の位置から変わっておらず、おまけに船上の様子にも変化が
ない。海上警戒体制は穴が開いたままになっている。

陸上では相変わらず街が燃えている。しかしポルトガル軍の発砲音はもう聞こえない。マ
ラカ城市内は既に制圧されたようだ。だが第二軍団はまだ上陸できない。第一軍団合同軍
が海上警戒態勢に戻ってはじめて、第二軍団マラカ侵攻部隊が入城できる。

ウヌスの座乗している旗艦に小船がやってきた。カントマナの使者が口上を述べる。「ウ
ヌス提督御上陸の用意が整いました。」

ウヌスは怒った。カントマナは作戦計画に従う意志を持っていない。ウヌスは何も言わず、
手振りで使者を追い返した。使者の船がマラカ港に着いたとき、北の海上でチェッバンの
砲撃音が聞こえた。北の警戒配備に就いていた第二軍団右翼船隊からの警報だ。

右翼船隊のマストの上の見張り兵が水平線上に出現したポルトガル船隊を発見したのだ。
十字架を大きく描いた主帆を破裂せんばかりに膨らませた5隻のポルトガル軍船隊が高速
で接近してくる。見張り兵が叫んだ。「ポルトガルだ!」

右翼船隊は一斉にチェッバンを船の前部に移した。第二軍団本隊に送られた信号と伝令が
本隊にも同じ動きを起こさせた。ウヌスは右翼船隊に命じた。「敵を砲撃しながら後退し
て本隊に合流せよ。」

陸上にも伝令が送られた。「ポルトガル軍船隊が接近中。即座に船に戻って応戦態勢を取
れ。」というカントマナへの命令だ。しばらくしてから陸上で慌ただしい動きが始まった。
たくさんの小船が兵士を満載して軍船に向かい始めたのだ。だがかれらはポルトガル製大
砲の性能の高さにはじめて直面することになったのである。[ 続く ]