「植民地の見本市(終)」(2026年03月31日)

一方の東インド植民地では、見本市にどのような変化が起こったのだろうか?政治リーダ
ーやエリートたちがさまざまな公約を撒き散らすためにスピーチを行う舞台という変化が
見本市に新たな機能を付け足した。プリブミ産業に資本を融通し、製品のマーケティング
を援助し、生産者の福祉を向上させるといった、ある種の公約だ。

しかし博愛精神を示すそんな公約も植民地行政の中で批判を浴びることなしに羽ばたき続
けることはできなかった。批判の内容はプリブミ産業が小規模ビジネスである点を衝いて
おり、行政がケアするに足る経済効果がそこから期待できるのか、という疑問がその核に
なっていた。


プリブミの経済活動に既存の実業界と同じようなプロモーションとマーケテイングの広い
機会を与えるために政府はプリブミの製品を購入して使用しなければならない、という提
案を倫理政策推進者のひとりJHアベンダノンが表明したとき、政敵たちがそれに?みつ
いたのである。

公共行政と統計ユニオンという調査機関に所属するスタディグループのひとつは、アベン
ダノンの提案は政府の負担を増やすだけのものであり、国家を危険にさらすことになると
反論した。大規模産業を発展させることがカンプン産業の世話を焼くよりはるかに明白な
利益を政府にもたらすことになるとかれらは確信していた。

バタヴィアなどの大都市に住んで繁栄を謳歌していたオランダ人の保守派階層も同じよう
な見解を表明した。かれらは倫理政策を推進している行政高官たちを「この東インドとい
う国が何を必要としているのかについて無知な連中」であると評した。

行政の頂点で展開されたそんな議論をよそに、一時期大いに流行した年次見本市も東イン
ド植民地のプリブミにたいした恩恵をもたらすことができなかった。見本市が活発に行わ
れていた時期に村落部の産業活動従事者プリブミ層の生活レベル向上がそれと並行して起
こったような現象はまったく見られない。

クドゥの見本市への参加に対する褒章として芋の苗と5フルデンの賞金を与えられたとラ
ンネフツの報告書の中に記されているマグランの退役検察官プラウィロクスモは十分満足
したかもしれない。しかし東インド政庁のプリブミ庶民に対する産業鼓舞行為が全員に喜
ばれたかどうかはわからない。

マグランのルンプヤン郡ジュマ村に住む女性ドゥクンのンボパダはトラディショナルジャ
ムゥ作りの道具を褒美として得たのだが、ひょっとしてあまり満足しなかったかもしれな
い。というのも、ディエン山で瞑想籠りを行って霊験あらたかなジャムゥ作り道具を手に
入れるほうがかの女にとってはそれよりずっと良かったかもしれないではないか。[ 完 ]