「プルタミニ(2)」(2018年09月12日) しかし全国各地には、そういうプルタミナの監督から外れた瓶入りや石油缶入りガソリン 販売が昔から満ち溢れている。かれらは最寄のガソリンスタンドへ石油缶を持ち込んで、 ガソリンを買って来るのである。中央政府がその種の危険な行為を禁止し、プルタミナが 傘下のガソリンスタンドにその厳守を命じても、その実態に変化は起こらなかった。 そして瓶入りガソリンを売る違法石油小売り販売者たちは、ビジネスの発展を目指して瓶 入りからプルタミニポンプへと業態を格上げし始めたのである。必要な資金はマニュアル ポンプで6〜7百万ルピア、デジタルポンプは1千7百万程度で済む。 店先にプルタミニポンプを置くことで、消費者の信頼度が高まり、売れ行きが増加する。 何しろポンプにはメーターが付いているだから。しかしプルタミナによれば、違法小売業 者のプルタミニポンプはメーターが正しくないのが普通で、公正取引面でも違法販売にな っているとのことだ。 プルタミナの監督指導から外れた違法業者の不安全な設備と規律のために、火災が何度も 発生している。なにしろ雑貨店の店先なのだから、火気厳禁など実践しようもない。くわ えタバコの客がやってくるのは当たり前だし、おまけに隣近所がコンロをポンプの近くに 置いて料理することさえある。 奇妙な話だが、プルタミナの監督下にない無認可石油燃料販売業者も、地元の役所と警察 の許可は得ているらしい。最寄りのガソリンスタンドからガソリンを仕入れるのに、その 役所の許可を提示するというのである。この裏側には地元行政の思惑が絡んでいる。 プルタミナはある州の自治体首長に対して、地元民の無認可石油燃料販売を禁止するよう に求めた。しかし州民の経済活動を抑え込むことを喜ぶ首長はいない。そもそも、国有事 業体が州の最高行政官にああしろこうしろと言ってくること自体がお気に召さないという 雰囲気がある。中央政府内務大臣や大臣級の人物が言うのとは重みが違う。 おまけに法律が違反であるとしていても、中央政府が何らかの方針を出してこない以上、 自治体首長にとってそれは対応に迫られていないことがらとなってしまう。 法律上は許可認可でがんじがらめにしてあっても、実質上、貧困庶民の経済活動が貧困か らの離脱を促し、人倫あるいは国家経済に大きな悪影響を与えないのなら、あえて細かい ことがらに遵法を強制しないのがインドネシア文化だということなのだ。[ 続く ]