「インドネシア語の図像性」(2018年10月16日)

ライター: オボル財団編集者、ヤンワルディ
ソース: 2018年2月10日付けコンパス紙 "Hanzi dan Ikonisitas"

わたしは最近、インドネシア大学文化科学部中国学者ヘルミナ・スタミ氏と会談した。言
語学上のことがらについて、わたしが話し合いに誘ったのだ。かの女はその専門分野に即
した話として、実用的な漢字の使用を実現させたい意向を明らかにした。要するに中国語
を学ぶことなしに、個々の漢字の意味が理解できるとかの女は言うのである。どうやった
らそんなことができるのか?わたしは唖然とした。

中国語は表記システムに漢字を使っている。かの女の言に従えば、その文字の大部分は物
あるいは観念をシンボライズした絵文字もしくは表意文字であり、意符と音符を組み合わ
せた諧声である。その結果、中国語が分からなくてもその形を注意深く観察するなら、中
国語の文法の諸規則が図像的で平明であって実体とシンボルが相互に関連しているように、
個々の漢字の意味も容易に理解できる。それだからこそわれわれは、中国語を知らなくて
も各漢字の意味を容易に推測できるのである。

漢王朝時代の文字学者で辞書編纂者である許慎(Xu Shen)は漢字作成方法を再現し、51
2の核となる字義を収集し、獣・植物・人体・自然等々のカテゴリーに分類したとインド
ネシア最初の中国学研究者であるかの女は説明した。それらの要素に着目すれば、文字の
形と語義を結びつけることができる。つまり中国語を学ばないでもひとは漢字の語義を、
たとえぴったり的確でないにせよ、それがどのカテゴリーの言葉であり、何を意味してい
るかを推測できるのだそうだ。
インドネシアにも数年前に、中国語を学ばないで漢字の語義を理解したいひと用の便宜を
はかる辞書Kamus Dasar Mandarin-Indonesia (2005年)が出版されている。


ラテン文字による音素システムを使っているインドネシア語は絵文字/表意文字とは異な
っている。しかしインドネシア語の中にも図像的で平明な要素を見出すことはできる。た
とえば「ア/a/」の音はnganga, buka, belah, ngangkangのようにオープンな状態を示し、
「ル/le/」はletih, lelah, lesuのように身体が不調な状態を示している。更には、語頭
音が身体部位と近い関連性を持っていることを示す明白な語群がある。頭(ke/pala)に使
われている/p/音は、その部位に現れる痛みを述べる言葉pusing, pening, penatに使われ
るし、手(tangan)の/t/は手で行う動作を示す動詞tepis, tangkis, tusuk, tebangに出現
する。

インドネシア語には類似の現象がまだまだたくさんある。より専門的な理論的調査が必要
であり、実用面からその結果が検討されるべきだ。インドネシア語とジャワ語の図像性研
究はハリムルティ・クリダラクサナ氏とスダルヤント氏のものに見ることができるが、実
用面での応用はまだだれも引き継いでいないようだ。許慎と同様、われわれの辞書編纂者
や言語専門家たちはカテゴリー別に語義を分類するべきだろう。その分類が実用性に関わ
っているのである。

インドネシア語は世界中のたくさんの言語で使われているラテン文字のおかげで、メリッ
トを得ている。インドネシア語を読むのに大きい困難はなく、また音と語義カテゴリーの
関連付けができれば、読者の理解はより容易になる。その実用性を秘めたカテゴリー分類
作業はまだ着手されていない。今から始めようではないか。