「バンドン高速鉄道近況(前)」(2018年11月01日)

ジャカルタ〜バンドン高速鉄道はインドネシアの国有事業体が設立したピラルシネルギB
UMNインドネシア株式会社と中国の北京雅万高速剛(Beijing Yawan HSR)株式会社とで
設立された合弁会社PT KCIC (Kereta Cepat Indonesia China)によって進められているプ
ロジェクトであり、インドネシア政府はこの会社に対してBOTコンセッションを与えて
プロジェクトの全責任を負わせている。インドネシア政府が中国政府との間で直接何かを
しているということでは決してないし、KCICという会社がどう転ぼうがその尻拭いを
インドネシア政府が引き受けるような形にもまったくなっていない。

政府はそういう形にして一旦このプロジェクトを突き放しておき、その上で自らの手先で
ある国有事業体をこのプロジェクトで意のままに使おうという姿勢を明白に示している。

KCICの出資比率はピラルシネルギが6割、北京雅万社4割で、インドネシア側がマジ
ョリティを占めている。ピラルシネルギ社の資本金比率は、公共事業省事業体ウィジャヤ
カルヤ38%、インドネシア国鉄25%、第8国有農園会社25%、自動車専用道運営事
業体ジャサマルガ12%となっている。


このプロジェクトについては、最初の行き掛かりに種々の思惑がからみあって諸説を生ん
だ。ある国のマスコミが頻繁に示す、上から下まで一枚岩の政府、社会、国民、を想像さ
せるような論調のままの国など、あったら奇跡と言えるだろう。不一致を騒ぐか騒がない
かをその存在の有無の反映と見てはならないのである。

この高速鉄道は複線でジャカルタのハリムとバンドンのトゥガルアルの両ターミナル間全
長142.3キロを結び、途中停車駅をカラワンとワリニに置くことになっている。その
間を中国の高速鉄道技術を使った列車が時速350キロで走るのである。

親中派がかついで実現させたこのプロジェクトが国民マジョリティの意向に沿うものだっ
たかどうかは、その後の進展が烙印を捺したようだ。最初、線路が通過するエリアの用地
買収にまるで熱がこもらなかったことがそれを証明していると言えないだろうか。それで
もどうやら、用地買収は現在既に113キロが確保されているそうで、やっと8割がたま
でこぎつけたらしい。[ 続く ]