「バンドン高速鉄道近況(後)」(2018年11月02日) 2016年1月にスタートを切った工事着手は遅れに遅れてやっと緩慢にでも動き出し、 その後政府とKCICが結んだBOT契約の期限繰り延べまで行われて、2018年の工 事進捗予定8%に対して現在やっと3.2%まで進んできたことが報告されている。20 19年は拍車をかけて60%まで終了させ、2021年半ばの操業開始をぜひ計画通り実 現させたいと関係者は意気込んでいるところだ。 で、その鉄道運行オペレータについて、わが社の独占オペレーションにさせるようにとイ ンドネシア国鉄が主張を公にした。KCICはオペレータについて中国の北京鉄路局とイ ンドネシア国鉄の合作チームにオペレーションを受け持たせるのを原案にしており、国鉄 の主張はその計画に一石を投じたことになる。 国鉄代表取締役はその主張について、鉄道運行事業には公共サービスオブリゲーション要 素が必ず付随するものであり、民間にオペレーションを委ねたなら、そこの責任が完遂さ れないおそれがある、とその理由を述べている。国鉄はその主張をKCICに対して既に 書面で要請したとのことで、入札など行うことなく、国鉄を単独でオペレータに指名せよ というのが要請内容だ。 これまで国内の鉄道事業はインドネシア国鉄の完全な独占形態で進められてきた。だから 国内に民間オペレータ会社はまったく育っていない。そこにこの高速鉄道プロジェクトが 入って来たのである。このプロジェクトのために中国から鉄道システム設立と運営・列車 運行・車両整備等々の技術と資本がインドネシアに持ち込まれることになるのは疑いある まい。独壇場の一部の明け渡しを強いられる国鉄にとって、長堤の一穴は悪夢の始まりに なりかねない。ジャカルタ〜スラバヤ中速鉄道さえ、プロジェクトは完全に国鉄の手中で 行われており、日本人が資本と技術をインドネシアに持ち込んでこれまで独壇場でやって きた国鉄事業の一角に取りつこうというスタイルにはされていないのだから。 中国側からの反論が出されることは、考えるまでもあるまい。国鉄の保護主義は中国側の 思惑と真っ向から対立するに違いない。現政権自体が民間活力導入の傾向を強く持ってい るため、この結末は想像のつけやすいもののように見える。ただ現政権末期に出てきたこ の波紋は、来年の大統領選挙の結末いかんでどのように処理されることになるのか、予断 をゆるさないところだろう。[ 完 ]