「チカラン物語(後)」(2018年11月09日)

続いてチカランのニュータウン建設も推進された。すべての所得層向け住宅が建設され、
21平米住宅から高級住宅まで確保された。サッカーグランドからゴルフ場まで、お好み
次第だ。

ジャバベカグループとは別に、シナルマスランドもリッポチカランの開発を開始し、今話
題を振りまいているメイカルタにまで発展している。


中央チカラン郡ジャヤムクティ村の街道沿いでワルンを営んでいる住民のひとりは、開発
貧乏の谷間に落ち込んだ地元民の一例だ。30平米の地所に建っているこじんまりしたそ
のワルンはデルタマスブルヴァルとオレンジカウンティ通りの交差点に面している。メイ
カルタ地区への入り口ゲートがある場所だ。

昔からそこに住んでいたこの一族は、2003年にデルタマスの道路建設のために3百平
米の土地を廉い地価相場で明け渡さなければならなかった。かれらは残された30平米に
しがみついているのである。

その家の主人にとって、生まれ育ったその土地を去る気は毛頭ない。周りの土地を買い取
って昔のようなゆとりのある生活を再現したいと念願しているものの、土地の値上がりが
その一家を打ちのめした。

「いま、この一帯は平米7百万ルピアですよ。うちみたいに土地を削り取られて細々とや
っている世帯はたくさんあります。たいていのひとはニュータウンの裏にできた密集住宅
地区の狭い家に住んで、定職はなく、毎日何かをして日銭を稼ぐ暮らしに落ちてますね。」
ご主人はそう語る。

しかし西ジャワ州クニガンから出てきた女性は、同じような密集住宅地区の住居に住みな
がら、食べ物ワルン商売に励んでいる。メイカルタニュータウンの建設が進められている
中、膨大な数の建築労働者がそのエリアに集まってきているのだ。廉価な食事の需要はす
さまじいものがある。
「うちは2カ月ごとに家族が交代でここにきて商売してるんです。なにしろ田舎は仕事が
何もなくて。ここだと労働者がひっきりなしに食べに来ますから。」


中央統計庁によれば、2017年ブカシ県GDPは282.5兆ルピアで、その78.4
%が製造産業セクターのシェアになっている。かつてのチカラン郡は現在東西南北中央の
5郡に分割されている。最大の人口を擁しているのは南チカランで27.6万人、次いで
北チカラン26.4万人、更に西チカラン26.2万人、他は10万人前後となっている。
メイカルタは南チカラン郡にある。[ 完 ]