「若いクジラの死」(2018年11月23日)

東南スラウェシ州ワカトビ諸島のカポタ島西部海岸の浅瀬に、18年11月18日、若い
マッコウクジラの死体が打ち寄せられているのが発見された。体長9.5メートル幅4.
4メートルのこのまだ若いクジラは腐乱が始まっており、ワカトビ国立公園管理館は死因
究明のためにワカトビ海洋漁業コミュニティアカデミーに解剖調査を委託した。

アチェからパプアに至るインドネシア国内の海岸にクジラが打ち上げられた事件は198
7年以来2018年11月までで371件発生し、2018年だけでも28件起こってい
る。従来、クジラの群れに座礁が起こると、群れの先導役が人間の作り出している音波に
よる混乱で方角を誤ったためという理由付けがなされるのが一般的だった。その見解は単
独座礁したクジラにも適用されていたが、その定説とは異なる理由が存在していることを
推測させる状況の糸口が、今回の事件で明白になってきた。

この若いクジラは方角を誤ってカポタ島西部海岸の浅瀬に乗り上げ、悲運な死を迎えたと
いう推測は本当なのだろうか。かれは自由に泳げる場所で不幸にも死亡し、その死体がカ
ポタ島西部海岸まで漂着したのではなかったのだろうか?だとすれば、その若さでどうし
て死亡するに至ったのだろうか。

解剖の結果、そのクジラの消化器官から総計5.9キロのプラスチックゴミが出てきたの
である。コップ型容器115個、硬質プラスチック19個、プラボトル4個、プラ袋25
枚、木片6個、ゴムサンダル2個、大型ナイロン袋1個、プラスチックひも1千片・・・。


海洋生物学者のひとりはクジラの写真を見て、やせていることを指摘した。大量のプラス
チックは栄養の吸収を妨げ、おまけに分解しないために内蔵に炎症を引き起こし、それが
クジラの命取りになったのではないだろうか。

類似のことは東カリマンタン州のマハカム川に棲息する淡水イルカのプスッ(pesut = 日本
名カワゴンドウ)や海イルカでも観察されている。死骸の消化器官に大量のプラスチックゴ
ミが入っているのだ。

プラスチックによる海洋汚染の問題は目新しい話題ではない。それが海洋生物の保護と保
存に大きな脅威をもたらしていることも、新しい話ではない。インドネシアに打ち上げら
れたクジラの死因がプラスチックゴミであったことが大きな確率で実証されたのが、イン
ドネシアにとっての新しい話題なのである。

インドネシアで消費されたあとのプラスチックゴミは20%が海に流れ込んでいる。世界
第二位のプラスチックゴミ海洋汚染国と名指しされているインドネシアの汚名解消努力に
この事件が力を添えるのを祈るばかりだ。