「性欲を殺ぐ文明(2)」(2018年11月29日) イギリスの国民ライフスタイルと性行動サーベイ2013年版は、国民の平均回数が20 00年に月6.3回だったものが、2013年は月5回になった。オーストラリア人も同 様で、2004年の7.2回が2014年はひと月5.6回にダウンしている。 日本の状況はそれにも増して不安をかき立てる様相を呈している。日本家族計画協会(JF PA)の最新サーベイでは、ひと月間セックスをしない夫婦が47.2%を占めていると いうのだ。その数値は2004年から15.3ポイントアップした。 日本人のセックス意欲減退は若い時期から始まっている。2012年のジャパンタイムズ 紙に掲載された日本政府厚生労働省の男女関係に関するサーベイ結果によれば、男女青年 層のセックスへの関心は低下の一途と報告されている。2008年に20〜24歳年齢ブ ラケットにあった男性11.8%女性25%はセックスに興味がないと表明したが、20 10年は男性21.5%に、女性は35%に上昇した。年代を下げて行くと、その傾向は もっと強まる。 トゥエンゲ氏と友人たちの2015年の研究では、多くの国でミレニアル世代(1980 〜2000年生まれ)がX世代(1960〜1980年生まれ)やベビーブーマー世代( 1940〜1960年生まれ)よりも同一年齢時の性交頻度はもっとも小さくなっている ことが明らかにされた。 デンパサルのウダヤナ大学医学部男性科学性科学部長ウインピー・パンカヒラ教授は、性 交頻度に標準など存在しない、と言う。もちろん、足りなければ不満が生じる。「回数は お互いの合意にもとづいて決まることだ。互いに満足を与え合うのが、健全なセックスの 基本である。」 インドネシア大学ジェンダー・セックス・保健人類学者イルワン・マルトゥア・ヒダヤナ 教授は、セックスの基本機能は快楽にある、と言う。しかしこれまで、生殖機能とセック スは一体のものにされてきた。たくさんの国で発見されている古文書や寺院のレリーフが それを証明している。 産業革命で、快楽と生殖の機能分離が始まった。避妊技術の進歩が性交と妊娠のつながり を弱めたことで、妊娠の心配なしに快楽を追求することが可能になった。現代では、セッ クスはレクレーションとしての意味あいの方が優勢になっている。[ 続く ]