「一国家、一民族、二言語(4)」(2019年02月19日)

つまり、これは昔われわれがその勇気を持っていたことを証明するものであり、そして今
やそれは消滅してしまったということができる。

インドネシア語の発展にもっとも決定的な役割を果たす大衆コミュニケーション機関とし
て唯一のものであるマスメディアは、もっと早くから飾り立てた洒落者になっていたよう
に見える。そのありさまをもっともスペシフィックに体現しているふたつのマスメディア
を示しておきたいと思う。そのひとつは雑誌ME(Male Emporium)、もうひとつはMetro 
TVだ。

あらゆるコーナーを注目して見るがいい。すべてが英語になっている。MEでは、Main 
Issue, Sexual Life, Woman's Secret, Good Life, Man of the Month, The Persons, 
Woman We Love, Man Style, Details, Car, World Sport, Weekend, ......

企業スタッフと編集者欄には、Editor in Chief, Managing Editor, Art & Production 
Manager, Director of Finance, Stylist & Photography Editor, Publisher, ......

次にMetro TVの番組タイトルを見てみよう。Market Review, Headline News, Famous to 
Famous, Traffic Report, Show Biz News, Famous Home & Hideways, Money Talks, True 
Action, What Happened, Tomorrow's Line Up, Today's Dialogue, .......

Today's Dialogueではスタジオと視聴者が電話で会話する。画面上部には「live by phone」
の文字が刻まれている。

それらは英語メディアなのだろうか?いや全然違う。コーナーや番組のタイトルだけが英
語で記されているのだ。記事も、番組の中で使われている言葉も、すべてがインドネシア
語になっている。たいして格調があるとは決して言えないインドネシア語に。この状況は
蘭領東インド時代のインドネシアとまったく異なっている。1900年代初期にはTri 
Koro DharmoやDharmo Kondoなどのジャワ雑誌と呼ばれるものがあった。そこにムラ
ユ系記者たちは立派なオランダ語で記事を書いていたのだ。

上のアラブ語に取り込まれた語の元になった英単語はこれだ。
cafeteria, beefsteak, ice cream, sandwich, pipe, bicycle, cake, motorcycle, 
sugar, pension.
日本語の場合はこれ。
manager, fruit juice, sandwich, ice cream, cheese, cake, biscuit, hot dog, 
concert hall, shopping center.
インドネシア語はこれ。
troop, dog car, cheek car, fairy, must, flute, whistle, same, hurrah, just true.
[ 続く ]